「こんな使いにくいシステムだとむしろ効率が落ちる」。計画通りに進め、成果物を納め、契約上問題もないのに、顧客は不満を持っている―。これではプロジェクトは成功といえないだろう。本書は、本当にプロジェクトを成功に導くために、ベンダーから見た顧客、開発のチームメンバー、各ステークホルダーを含む組織をうまく動かしていくための実践書だ。筆者が自ら修羅場で経験した事実を基に得た多くのノウハウを収録している。

 例えば、冒頭の話の場合は、顧客が感じる「価値」を基に満足度を考えていくことが大事だと説明する。バリューエンジニアリング(価値工学)をベースに、方程式で表現しながら分かりやすく解説している。今流行のステークホルダーマネジメントにとどまらず、政治力、交渉力、影響力、合意形成力など、現場でリーダーが必要とする力を身に付けたいなら、必読の書だろう。


プロジェクトを成功に導く
人を動かす調整力

芝本秀徳 著
日経BP社 発行
2700円(税込)