分子の法則が人にも当てはまる

 日立中央研究所の主管研究長が、腕時計型や入退館カード型のウエアラブルセンサーを使い人の動きを計測しデータを分析。その結果を、物理学や心理学、哲学などの知見と組み合わせて、人間行動や組織のメカニズムを解き明かした。「やろうと思ってもやらなければ、ずっとやらない」「社員の主観的な幸福度を高めると会社は儲かる」など研究成果から得られる指摘は興味深い。

 統計物理学を絡めた第1章の内容は、文系読者に難しい印象を与えるかもしれない。思い切って要約すると「意思を持った人間の行動にまつわる法則は、意思がない分子の集まりに関する法則と同じ」。その法則はぜひ一読して確かめよう。


データの見えざる手
矢野 和男 著
草思社発行
1620円(税込)