著者に聞く

森田 直行(もりた なおゆき)氏
KCCSマネジメントコンサルティング代表取締役会長。1967年、京都セラミック(現・京セラ)に入社。アメーバ経営の仕組みと情報システムの導入と確立に携わった経験を踏まえ、他社の導入を支援する

JAL復活の秘話交えて経営手法を解説

 著者は2010年、事実上経営破たんした日本航空(JAL)に、稲盛和夫京セラ名誉会長らと乗り込んだ。JAL副社長として、京セラの経営管理手法「アメーバ経営」の導入を推進。2年8カ月での短期回復を果たした舞台裏とともにアメーバ経営の真髄を明かす。

(聞き手は西村 崇=日経情報ストラテジー)

本書をまとめた理由は?

 アメーバ経営を具体的に記した本は2006年の『アメーバ経営』(稲盛和夫著、日本経済新聞社)以来、久しく出版されていなかった。その間、関心は高まり「具体的なケースを知りたい」「小規模の企業でも導入したい」との声が相次いでいた。

 そこで稲盛さんに相談したところ「京セラでアメーバ経営の確立に携わり、500社以上の実績を持つ導入支援事業を担当しているお前が書くしかない」と言われ執筆を決めた。再建に携わった日本航空(JAL)に加え、中小企業、病院など国内外の事例を紹介した。

 特にJALの改革後、大手企業の方々から「アメーバ経営を導入したい」との声が多いので、参考にしていただける内容を目指した。

JAL再建の話が生々しい。

 JALで難しかったのは、航空事業1つに3万人が携わる体制だったことだ。アメーバ経営では、部門別採算制度を導入する。製造業では事業部に分かれていることが多いが、JALは1つ。どの部門が利益責任を負うかなど決めるのは難しかった。

 一方、採算などを迅速把握する仕組み作りはスムーズに進んだ。JALの担当者がすでに1便当たりの経費を導き出していたからだ。ただ2カ月遅れでデータが出ていたので、活用されていなかった。すぐ算出するよう変えると、機材の変更など、利益を出すための動きが早くなった。