「第三次産業革命」などの著書を持つ文明評論家の最新刊。IoTがもたらす産業構造の変化により、サービスや財を交換する資本主義社会に替わって共有型経済(シェアリング・エコノミー)が台頭するという未来像を描く。

 タイトルの「限界費用ゼロ社会」は、IoTが様々な経済活動を極限まで効率化し生産性を高める結果、モノやサービスを追加的に生み出す費用がゼロに近づく社会を指す。筆者は中世から現代までの産業構造の変化を分析しながら、IoTなどによってモノやサービスが無料に近づいて企業の利益が消失し、これまでの資本主義は衰退すると説く。

 資本主義の限界を乗り越えるために必要なのが、組織を超えた協働作業でモノやサービスを生み出し、共有していく共有型経済だとして、事例を交えて解説する。日本に向けた特別章では、IoTにかじを切ったドイツに対して、過去と決別し切れていない日本は岐路に立っていると警鐘を鳴らす。


限界費用ゼロ社会
<モノのインターネット>と共有型経済の台頭

ジェレミー・リフキン 著、柴田 裕之 訳
NHK出版
2592円(税込)