NTTドコモで「iモード」の開発担当責任者を務めた榎啓一氏による初の著書。iモード関連の書籍としては松永真理氏や夏野剛氏などの著書が有名だが、榎氏は当時の大星公二社長から最初の命を受け、一人でプロジェクトを立ち上げた人物である。まずは人材集めに始まり、仕様の策定、サービス開始に至るまでの経緯を丹念に描いている。「え、そうだったの」と驚かされる部分も多く、楽しく読める。

 榎氏は本書を中間管理職の視点で執筆したという。「会社に20兆円稼がせたスーパー・サラリーマン」との副題が付いているが、おごった部分は全くなく、「とにかく部下を信頼して仕事を任せ、手柄は部下に、責任は自分に」というポリシー。周囲からの批判には率先して矢面に立ち、潤滑油の役割を果たしてきたとされる著者の人柄がよく伝わってくる。松永氏や夏野氏との座談会も収録し、話題は現在のNTTドコモの硬直化にも及ぶ。


iモードの猛獣使い
榎啓一 著
講談社発行
1512円(税込)