エンジニアに聞く

濱野谷 芳枝(はまのや よしえ)
濱野谷 芳枝(はまのや よしえ) ラック システムサービス本部 金融システム第三統括部 第一サービス部で、顧客の企業向けにITインフラの構築を担当する。共著に情報セキュリティスペシャリスト試験の解説書「絶対わかるセスペ26秋」がある。
(聞き手は田村 奈央=日経NETWORK)

 今回紹介する「インフラデザインパターン」は、先輩エンジニアから「読んで勉強しておくといいよ」と渡された本です。

 デザインパターンとは、いわばベストプラクティス集ですね。この本は、大手システムインテグレーターのNTTデータが手掛けた多数のITシステムの設計・構築の事例を一般化し、幅広く利用できるデザインパターンにまとめています。

新しい情報だけ押さえてもダメ

 本書の良い点は、新技術だけでなく、古い技術も含めてメリットやデメリット、必要なコストなどをまとめて紹介していることです。
 エンジニアは新しもの好きなので、「とりあえず今一番すごい技術」を求めがちです。ユーザー企業にも、「よく宣伝を見かけるクラウドを使いたい」など、新技術の採用に積極的な担当者がいます。

 ところが、実際にそのシステムをビジネスで使う用途と照らし合わせると、最新の技術が本来の目的に合っていなかったり、オーバースペックだったりするケースは珍しくありません。本書は用途やコストを見極めて、適切な技術を選ぶための参考になります。

 各デザインパターンに「選定基準」の表が付いているのも実用的です。新しいシステムを導入する際には、エンジニア以外の人が意思決定に関与することがあります。本書には、エンジニア以外の人でも理解できる言葉で、簡潔に選定基準がまとめられています。システムの設計・構築の際に、顧客企業などのエンジニア以外の職種の人とコミュニケーションを取る際にも役立ちそうですね。