パナソニック(旧松下電器産業)の知られざる人事抗争を暴露した書。創業者の松下幸之助から6代目社長の中村邦夫に至るまでの経緯に詳しい。中でも松下幸之助の娘婿で2代目社長を務めた松下正治の暗躍を中心に描かれている。ドラマのようなドロドロした展開で、読み物のような感覚で読めてしまう。

 本書によると、松下正治の意をくんだ5代目社長の森下洋一により、“迷走と失速の経営” が始まった。人事の経験則を守るどころか、松下正治の好き嫌いだけでトップ人事が決まり、経営が采配されたという。影響は6代目社長の中村邦夫と7代目社長の大坪文雄にも大きくのしかかった。本書では「人事に情をからめるとロクな結果をもたらさない」といった下りがあり、同志と思っていた相手から足元をすくわれる例が何度も出てくる。単に優秀な人材を選べば済むわけもなく、人事の難しさを改めて感じた。


ドキュメント
パナソニック人事抗争史

岩瀬達哉 著
講談社
1490円(税込)
240ページ