かつて「レイオフをしない」と宣言していたソニーが、リストラばかりに陥っていった様子を克明に描いた書。本書を読むと、ソニーの凋落は出井伸之社長の時代(1999年~)から急速に進んでいったことがよく分かる。丹念な取材に基づいた背景描写に詳しく、一気に読めてしまう。社内の精鋭を集めて米アップルの「iPad」のような製品を企画していたが、最終的にトップが決断できずに無駄に終わるといったエピソードも豊富である。

 本書はリストラの話が中心にもかかわらず、暗いイメージだけが残るような感じではない。リストラに立ち向かった社員や新天地に活路を求めた社員の話が多く、問題はあくまで経営陣にあるというスタンスで一貫しているからだろう。ただ本書も指摘する通り、今や大規模リストラは日本の名立たる企業で普通に見られる。日本の競争力は弱くなったという指摘が多い中、複雑な思いだけが残った。


切り捨てSONY
リストラ部屋は何を奪ったか

清武英利 著
講談社
1728円(税込)