人々のつながりは経済をも動かす

 音楽の売り上げランキングや、アプリのダウンロード数、本のベストセラーリストなど、私たちの周りには様々なランキングがあふれている。人々はそれに一喜一憂し、場合によっては、様々な手段を駆使してランクを操作しようとする。そうした行為が賛否両論を呼んだり、不正だと見なされてペナルティを科せられたりすることもあるほどだ。

 しかしなぜ、私たちはランキングに固執するのだろうか?「 良いものをつくれば売れる」ではないが、その熱意を、製品やサービス自体のクオリティを上げるのに費やすこともできるはずだ。人間は合理的な判断を行う生き物である。ランキングの操作に熱を上げなくても、売り物を良くすることに力を入れれば、やがて売り上げが上向くに違いない―。

 残念ながら、こうした考え方が必ずしも正しくないことを、私たちは経験的に理解している。人は他人の行動に強く影響され、「あの人が持っているから買う」のように、合理的とはいえない判断を下すことも珍しくない。だからこそ、ランキングという「他人の行動を表したもの」が大きな影響力を持ち、それを操作することに意味が生まれるわけだ。

 本書はそうした人々の心理やつながり、ネットワークといったものが、実は経済を動かす大きな力であることを解説している。伝統的な経済学では、人間は情報を正しく理解し、合理的な判断を行う存在だと見なされてきた。しかし集められる情報の量や、脳の認知能力などに限界があることから、合理的な判断が行われるとは限らないことを明らかにしているのが、最近流行している行動経済学だ。本書はさらに一歩進め、ネットワーク理論と経済学を融合することで、人間の経済活動をより正しく理解できると訴えている。