人工知能が広げる格差 未来のヒントはチェスに

 人工知能(AI)の発達によって、社会がどう変わるかを予見した書。AIの進化は著しいが、人間の仕事を全て代替するようになるには時間がかかると著者は見る。例えばチェスの世界では1997年にAIが名人に勝利しているが、実はAI単独よりも「AIと人間のペア」の方が強いのだという。それと同じように今後は、AIの能力を補完できる技能を持つ人間が高い賃金を得られるようになると予測する。

 しかし一方で、そうした技能を持たない人間はAIに職を奪われる。その結果、持つ者と持たざる者との間の経済格差が拡大し、中産階級が消滅する事態を招くと著者は結論付けている。


大格差
機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

タイラー・コーエン 著、池村 千秋 訳
NTT出版 発行
2592円(税込)