変革生むには意識も変えるべし

 メディア論の先駆者であるマーシャル・マクルーハンは「我々はまったく新しい状況に直面すると、常にもっとも近い過去の事物とか特色に執着しがちである。我々はバックミラーを通して現代を見ている」という有名な言葉を残している。未来を考えているつもりで、実は過去にとらわれがちな傾向への戒めだ。

 自動車の普及に貢献したヘンリー・フォードも「もし顧客に何を望むかを聞いていたら、もっと速い馬がほしいと答えていただろう」と語ったとされている。人間の思考は、常に周囲の世界から制約を受ける。移動手段として馬にこだわった過去の消費者を笑う現代の私たちも、気づかないうちに同じ過ちを犯しているはずだ。

 こうした習慣的な行動や思考を、本書は「ダウンローディング」と呼び、それに依拠する限り過去から学ぶことしかできないと訴える。そうではなく、本当に望ましい状況を思い描き、そこを目指して行動すること―それこそ本書のタイトルにもなっている「出現する未来から導く」という思考法だ。

 本書はさらに、そうした本当に目指すべきゴールを見極めるために、様々な角度から現代社会を考察している。労働や資本、技術、消費など、社会システムの構成要素に、つぶさに光を当て、それらがどのようなステージにあるかを、1.0から4.0の4ステージに分けて考察。機能不全に陥る理由や、望ましい最終形態を詳しく解説する。