チャットボットとはチャット(会話)に自動応答するロボット(機能)のこと。WeChatやLINEといったメッセージングアプリでの導入が先行し、最近では米マイクロソフトや米フェイスブック、米グーグルもチャットボットへの取り組みを本格化させている。人工知能(AI)を活用することで、より自然な対応も可能になりつつある。

 「チャットボット」という言葉が2016年からICT業界をにぎわせている。チャットボットとは、チャットアプリ上でユーザーと「ボット」が自動的に会話するようにデザインされたプログラムのこと。ボットとはロボットの略称で、もともとは人がコンピュータを操作することで実現していた処理を、人に代わって自動的に実行してくれるプログラムのことである。

 これまでのチャットボットは、決められた問いに対して決められた回答を返すものでしかなかったが、最近では人工知能(AI)を組み込むことで複雑な応対も可能になりつつある。このような「人工知能と会話できる」チャットボットに、新たなユーザーインタフェースとしての期待が集まっている。

WeChatが先駆けLINEが追従

 チャットボットが注目されるようになったきっかけの一つとして、中国のIT大手「騰訊(テンセント)」が展開するメッセージングアプリ「微信(WeChat)」が挙げられる。WeChatは2013年頃からチャットボットを導入し、今では映画のチケット購入や病院の予約、タクシーの配車手配などが可能になっている。これまでは個別のアプリを立ち上げる必要があった作業がまとめてWeChat上で済ませられる。今やWeChatは、中国におけるすべてのモバイルコマースの入り口となるプラットフォームに成長し、日常のあらゆるシーンで使われるようになった。ただ、WeChatのサービス開始当初は、正確に回答するためにチャットボットの裏で人が対応していた。それが今では、蓄積されたデータを活用することで、チャットボット自体にユーザー対応させるよう開発を進めている。

 このWeChatのビジネスモデルを踏襲するメッセージングアプリが、米国10代の約40%が利用しているカナダ発の「Kik」である。Kikの音楽サービス「Jam」にチャットボットを活用し、ユーザーの音楽の嗜好を判別して、類似するユーザーをつなぐ機能が若者に好評だ。2015年8月にテンセントと提携し、2016年4月にボットショップを開設、ツールを提供している(写真1)。

写真1●Kikのボットショップ
写真1●Kikのボットショップ
出所:米Kik Interactive
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 日本で人気のLINEも例外ではない。2016年4月に「BOT API Trial Account」を公開し、企業や個人が開発したシステムやサービスとLINEアカウントを連携させることで、ボットアカウントを作成できるようにしている。既にヤマト運輸が導入した。2016年夏をめどに「BOT API」と「BOT STORE」を公開する予定。チャットボットが実現すれば、レストラン検索やスケジュールアプリと連携させて、予定の通知やクーポンの発行が可能になるほか、スマート家電などのハードウエアと連携してLINEから操作できるようになる。LINE一つで様々なアプリを代替する将来像が見えてきた。