米国の携帯電話事業者であるT-モバイルUSが、Wi-Fi(無線LAN)上で音声通話やSMS(ショートメッセージングサービス)を可能にする「Wi-Fi Calling」の提供を開始した。ただ上位のAT&Tモビリティやベライゾン・ワイヤレスは慎重な構えを示すなど、温度差が見られる。Wi-Fi Callingの現状と将来性を分析する。

 2014年9月、米国ではiPhone 6/同Plusの発表に合わせて、携帯電話事業者が通話サービスに関する方針をそれぞれ打ち出した。特に注目を集めているのが「Wi-Fi Calling」である。

 Wi-Fi Callingとは、Wi-Fi(無線LAN)を使った音声通話やSMS(ショートメッセージングサービス)のこと。Wi-Fiで接続している環境では、SIMに付与された電話番号を使って、音声やテキストの発信/着信が可能である。このときの音声通話やデータ送受信はどこにいても国内料金の扱いとなる。

前のめりなT-モバイルUS

 Wi-Fi Callingに熱心な事業者がT-モバイルUSである(写真1)。同社は米国で初めてiPhone 6/同 Plus上でWi-Fi Callingを利用できるようにした。さらに、ユーザー宅内にWi-Fiを積極的に導入していく計画を明らかにした。

写真1●Wi-Fi Callingに積極姿勢を示すT-モバイルUSのネヴィル・レイCTO
写真1●Wi-Fi Callingに積極姿勢を示すT-モバイルUSのネヴィル・レイCTO
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 同社の狙いは、特に屋内における携帯電話ネットワークのカバレッジをWi-Fiで補完することにある。上位2社(AT&Tモビリティ、ベライゾン・ワイヤレス)に比べてカバレッジの劣るT-モバイルUSにとっては相応の効果が期待できそうだ。

 加えてT-モバイルUSは宅内用Wi-Fiルーターの「Personal CellSpot」(台湾エイスーステック・コンピューター製)を無償で配布している(最初に25ドルのデポジットが必要)。高速規格のIEEE 802.11acに対応し、Wi-Fi Callingのユーザーエクスペリエンスを向上させる。