スマートフォン出荷台数で世界最大の韓国サムスン電子は2016年10月11日、最新スマホ「Galaxy Note7」の製造と販売を終了することを発表した。同製品は出荷後に発火が相次ぎ、9月2日に米国や韓国など多数の国で250万台以上がリコールされた。世界各国における一連の騒動を紹介し、今後を見通す。

 米国における「Galaxy Note7」のリコールをきっかけに、同国のみならず全世界へ波紋が広がった。米国ではバッテリーが過熱した報告が92件、そのうち26件が火傷で、55件がガレージや車の中での発火など物的損害が報告された。これらを踏まえて9月15日、米消費者製品安全委員会(CPSC)は、米国で販売された約100万台のGalaxy Note7をすべてリコールすることを発表した。

 その後、米AT&Tや米ベライゾンなどの通信事業者は消費者の混乱を避けるため、リコール交換後であっても同機種の提供を停止することを決定。T-モバイルUSのジョン・レガーCEOは、自身のTwitterで消費者にGalaxy Note7の危険性を訴え、購入した人はすぐに返却するように呼びかけていた。また、日本航空(JAL)をはじめ世界中の航空会社が機内への持ち込みを禁止した。

 スマホはコモディティー化して価格低下が進んできたが、今回の発火事故を見て、スマホは精密機器であり、いざとなったら危険を引き起こす製品であることを認識した人も多いだろう。

当初問題なかった中国でもリコール

 中国では当初、「事故の起きたバッテリーと異なるメーカーのバッテリーを使っている」という理由でリコール対象外だった。しかしサムスンは9月14日、「2016年7月20日から8月5日までに製造した1858台のみリコールする」と発表した。この時点では9月以降に出荷した端末はリコール対象外だったが、中国でも20件の過熱、発火が報告され、リコール対象が拡大された。品質監督当局は10月11日、「異常な発熱や発火などの問題が存在し、火事など深刻な事故を引き起こす可能性がある」とのことから「SM-N9300 Galaxy Note7」全台をリコールすることを発表した。対象台数は19万984台とみられる。

 韓国では8月19日に予約を開始したGalaxy Note7だが、40万台もの予約を集めた人気製品で、その分大騒ぎとなった。韓国政府の産業通商資源部・国家技術標準院は10月11日、前日に開催したGalaxy Note7事故調査の合同会議で新たな欠陥の可能性を確認したことを明らかにした。サムスンは同日、Galaxy Note7の製造と販売を恒久的に終了することを発表した。

 ミャンマーでは当初、9月11日に販売開始する予定で、事前に予約も受け付けていた。ヤンゴンの町中や地方でも道路のビルボードなどで「Galaxy Note7」の宣伝や広告を多く見かけた。このようにサムスンは多額のマーケティング費用をかけて同国でブランドの構築を進めていたが、今回のトラブルで大きく失墜してしまった。

 Galaxy Note7の生産国であるベトナムにも影響が出ている。同国にはサムスンの工場が2カ所あり、製造・組立を担当している。ベトナム統計総局によると、Galaxy Note7発火によるリコール問題でベトナムの2016年9月の輸出総額は前月比6.8%減少したとのことだ。