2017年9月12日から14日にかけて、米国最大のモバイル関連カンファレンス「Mobile World Congress Americas」(MWCA)がサンフランシスコのモスコーニ・センターで開催された。

モスコーニ・センターで開催されたMWCA(筆者撮影、以下同じ)
モスコーニ・センターで開催されたMWCA(筆者撮影、以下同じ)
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MWCAの展示会の様子
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 初日のキーノートの冒頭、米国モバイル業界団体CTIAのCEOであるMeredith Baker氏は「米国が5Gで世界をリードする必要がある」と、世界における5G競争の勝利に向け米国通信業界全体を鼓舞した。

 またMWCAでは米国の通信事業者の主要4社の5G戦略が明らかとなった。固定回線向けに早期導入を目指すVerizonとAT&Tとは対照的に、SprintとT-Mobile USはスマートフォン向けにこだわる姿を見せた。

 本稿では、MWCAで浮き彫りとなった米国の規制当局や通信事業者の5G戦略について解説する。

5Gに向けスモールセル規制緩和を進める米政府

 冒頭でCTIAのBaker氏のコメントを取り上げたが、このようにCTIAが5Gのリーダシップにこだわるのは、5Gが米国に大きな経済効果を生むと期待されているからだ。CTIAの調査によると、5Gにより米国に300万の雇用が生まれ、5,000億ドルの経済成長が実現するとの予測が示されている。

 ただし、この予測では5G技術において米国が世界を席巻することが前提条件となっている。そこでCTIAはMWCAにおいて、米国の通信規制機関であるFCCに対して5Gの発展を促す施策を求めた。特に強く要請したのが「スモールセル規制の緩和」である。

 5Gでは高速大容量通信を実現するために、高周波数帯域(ミリ波)の活用が想定されている。高周波数帯域を活用することで、データ速度やデータ量が劇的に向上する半面、伝送損失が大きく、壁や窓などの障害物に遮られやすい特徴がある。

 この特徴を補うために、小型基地局である「スモールセル」を公共施設などに高密度に設置する必要がある。MWCAでは、このスモールセルに対する規制が5Gの展開を大きく阻害するとの指摘が相次いだ。