中国におけるMVNO(仮想移動体通信事業者)事業がトライアルから本格サービスへとシフトしつつある。そこでMVNO導入の背景や参入プレーヤーの事業概要、料金プランの特徴について解説するとともに、中国通信業界へのインパクトや今後の事業課題について整理する。

 2014年6月、中国ではMVNO(仮想移動体通信事業者)各社が相次ぎ料金プランの詳細を公表し、本格的なサービスの提供を開始した。通信当局の工業・情報化部(MIIT)によるMVNOトライアルライセンスの発給から約半年が経過したタイミングだ。

 背景にあるのは3大通信事業者(MNO)による独占体制の打破。国有企業である中国移動、中国聯通、中国電信の契約者数を合計すると12億となり、人口普及率で90.8%を突破した。売上高も合計で1兆元(約16兆円)を超えた。巨大化した3社が経済成長に貢献する一方で、市場の成熟に伴った独占による弊害も顕著になってきた。経営陣による汚職の多発、料金の高止まり、サービスの均質化などに対するユーザーからの批判も日増しに高まっている。

 そこでMIITは2012年6月、「民間資本の電気通信事業へのさらなる参入奨励の実施に関する意見」の通達を発出し、政策面で民間企業による通信事業への参入を支援した。2013年5月には「移動転売サービストライアル案(MVNOトライアル案)」を正式に公表。具体的な政策方針を示した。トライアル案の中にはMVNOへの保護措置も盛り込まれた。相対的に弱い立場にあるMVNOを保護し、当局主導でMVNO事業を支援している姿勢がうかがえる(表1)。

表1●MVNOを導入している主な国のスタンス
表1●MVNOを導入している主な国のスタンス
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民間19社がトライアルライセンス

 MIITは2013年12月と2014年2月の2回にわたり、計19社に対してMVNOトライアルライセンスを発給した。有効期間は2015年末まで。MIITは各社の事業動向を勘案したうえで、改めて正式なライセンスを発給するとしている。