米アマゾン・ドット・コムが音声アシスタント搭載スピーカー「Amazon Echo」を市場投入したのは2014年秋のこと。そこから遅れること約2年、米グーグルが同製品の対抗馬となる「Google Home」の販売を開始した。また、グーグル以外の企業も類似の製品展開を始めている。各製品の特徴と各社の狙いを解説する。

 話しかけることで必要な情報を音声で提供したり、家電などをコントロールしたりできる「音声アシスタント搭載スピーカー」。その市場をリードする米アマゾン・ドット・コムが最近になって新たなデバイスを2つ発表した。

 まずは2017年4月26日発表の「Amazon Echo Look」。同社の音声アシスタント搭載スピーカーの第1弾「Amazon Echo」にカメラを内蔵したほか、音声による自撮りを可能にし、その結果をスマートフォン上で確認できる。自分のファッションを客観的に見られるほか、人工知能(AI)を活用したファッションアドバイザー「Style Check」がアドバイスをしてくれる。

 続く同5月10日には「Amazon Echo Show」を発表した。特徴は大きく2つある。一つはタッチスクリーンを搭載していること。ユーザーの望む情報を単に音声で伝えるだけでなく、視覚的にも表現できる。もう一つはカメラを搭載したことだ。ユーザーがテレビ電話などを使えるようになる一方で、同社がユーザーに関する情報をより多く収集できるようになる可能性もある。

 この展開に、恐らくは競合他社も追従してくると考えられる。これまでの動きを見てもそれは明らかだ。

先駆けの「Amazon Alexa」

 音声アシスタント搭載スピーカーの先駆けとなったAmazon Echo。同製品に搭載された「Alexa」と呼ばれるAIが会話や制御を実現している。通常はスリープモードにあるが、「Alexa」と呼びかけることで起動し、指示に従う。2014年秋にプライム会員向け、2015年7月より179.99ドル(約2万円)で一般向けに販売を開始して以来、順調に販売台数を増やしている。2016年3月に、持ち歩き可能なバッテリー内蔵の「Amazon Tap」と、廉価版の「Amazon Echo Dot」を販売するなど、その商品群を広げている。現在の市場シェアは実に約7割に達している(図1)。

図1●米国で利用されている音声アシスタント搭載スピーカーのシェア
図1●米国で利用されている音声アシスタント搭載スピーカーのシェア
出所:米eMarketer(2017年4月)
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 Amazon Echoの勢力が拡大している理由の一つは、2016年6月にAlexaを一部の開発者に対し限定公開したこと。これを機に、Alexa搭載製品が一挙に拡大した。現在、Alexa搭載製品はフランスのベンチャー企業の小型スピーカーから、韓国LGエレクトロニクスの冷蔵庫まで多岐にわたる。また、2017年1月に米国ラスベガスで開催された国際家電見本市「CES 2017」では、Alexa搭載デバイスが約700も発表されたとしてメディアで大きく取り上げられた。

 このほか、Alexaの機能を開発者が独自に強化できる「Alexa Skill Kit」を公開したことも普及に貢献した。ここでいう「Skill」とは「Alexaができること」である。例えば米ウーバーや米ドミノ・ピザがSkillを作成、配布している。それにより、ユーザーは音声でそれぞれのサービスを利用できるようになった。このような動きも含めて、2016年第1四半期にはわずか135だったSkillが、2017年第1四半期には1万を突破した。