コワーキングスペースがにわかに注目を集めている。

 コワーキングスペースは、いわゆる賃貸オフィスより小規模なスペースやデスクを貸し出すサービスである。極端なものはスペースさえ貸さず、登記のための住所や電話番号のみを供与し、電話は転送してしまうようなバーチャルオフィスなども含まれる。

 主な利用者は、ライターやデザイナーなどのフリーランスや起業家だ。日本では、1997年ごろから主にレンタルオフィスとして全国に広まったモデルであるが、既に過当競争にさらされ厳しい市場だと言われている。

 一見、新しいビジネスとは思えないコワーキングスペースが今なぜ注目されるのだろうか。従来型のレンタルオフィスビジネスを比較しながら、その理由を探る。

企業価値2兆円のコワーキングスペース提供ベンチャーWeWork

 SNSやスマートフォン(スマホ)などICTの活用で登場したシェアリングエコノミー。その代名詞となった民泊サービスのAirbnbやライドシェアのUberと並び、世界で注目を集めるベンチャー企業がある。それがコワーキングスペースを提供するWeWorkだ(写真1)。同社のビジネスは、「遊休資産×ICT」を具現化したシェアリングエコノミーの一形態とみなされている。

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写真1●WeWorkが提供するコワーキングスペースの例。上がブラジル・サンパウロ、下が韓国・江南区
写真1●WeWorkが提供するコワーキングスペースの例。上がブラジル・サンパウロ、下が韓国・江南区
出所:WeWork
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 2010年に創業したばかりのWeWorkの企業価値は既に170億ドル、約2兆円弱相当と報じられている。これがどの程度の規模なのか、国内企業でイメージすると分かりやすいだろう。時価総額2兆円を超える上場企業は国内では約60社で、2兆円クラスの企業には楽天やキリンビール、アサヒなどがある。NTTデータやJR西日本など名だたる企業は、これらに続く位置にいる。単純な比較はできないものの、WeWorkの現時点での注目度が見て取れる。参考までにUberの企業価値は510億ドル、Airbnbは255億ドルとされ、WeWorkよりはるかに大きい。

 WeWorkはニューヨークで創業し、現在は英国、フランス、ドイツ、中国、韓国、インド、イスラエル、ブラジルなど15カ国、49都市で事業を展開。155ヶ所以上のコワーキングスペースを提供する。利用者は世界で13万人を超えるという。Webサイトから実際に利用登録を試みると、多くのビルで現在空きがないと表示される。

 2017年7月にはソフトバンクとの合弁会社WeWork Japanの設立を発表した。2018年初めには東京に拠点を開設する。日本語サイトの準備も進んでいるようだ。報道では、三菱地所などの大手不動産会社との提携についても伝えられている。