契約数が1億件のマイルストーンに到達したNetflix。米国単体の契約数も5,000万件を突破した。今から20年前に創業し、DVD郵送サービスから始まった同社は、破竹の勢いで従来のTV・映画を含む動画とその周辺の市場に破壊的創造をもたらし続けている。同社はこの先どこに向かうのだろうか。

海外展開に目を向けるNetflix

 契約数が米国で5,000万件超、世界で1億件超となったNetflixだが、契約数の伸びそのものは徐々に鈍化してきている。直近の2017年第1四半期(1〜3月期)の実績を見ると、142万件の契約数を獲得しているが、223万件だった前年同期と比較すると成長ペースは明らかに減速している。米国では実に全体の40%を超える世帯がNetflixを視聴している計算だ。Netflixは米国市場の伸びしろはまだあると見ている一方、これまでのような急成長は見込めないと判断しているようだ。

Netflixの契約数
Netflixの契約数
出所:Statistaのデータを基に情総研作成
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 そこでNetflixが注力しているのが海外展開だ。同社は既に2016年に世界190か国以上に進出を果たし、世界中で知られた存在になっているが、取り組みはまだ十分とは言えない。以下では、最近のNetflixの米国外での展開の状況を見ていきたい。

日本市場でオリジナルコンテンツを展開

 日本市場では、2015年9月のサービス開始以来、様々なオリジナルコンテンツを提供して契約数を積み重ねている。例えば、2015年の「アンダーウェア」や2016年の「火花」である。2017年と2018年にもオリジナルコンテンツの配信が決まっている。

 これらのオリジナルコンテンツがNetflixの差別化ポイントになっているのは明らかだが、契約数が150万件を突破したHuluやdTV、Amazonプライム、U-NEXTなど競合も多く、Netflixの契約数は100万件に達していないと見られる。そのため、米国市場と同じ傾きの上昇カーブを期待するのは難しそうな状況だ。

超巨大市場、中国への挑戦

 Netflixが世界190か国以上でサービスを提供している中で、数少ない未対応国・地域の1つとなっているのが中国だ(ちなみに他の未対応国・地域としてはシリア、北朝鮮、クリミアがある)。中国は超巨大市場であり、さらなる成長を目指すNetflixにとっては是が非でも攻略したい市場のはずだ。

 実際、ここ数年は市場関係者の間でNetflixが中国市場に参入するかどうかに注目が集まっていた。Netflixは過去2年以上にわたって中国現地のパートナーを模索していた模様で、阿里巴巴(Alibaba)傘下の華数伝媒(Wasu Media Holdings)など複数の企業と交渉していたと報道されてきた。

 このような状況の中、Netflixは2017年4月、愛奇芸(iQIYI)をパートナーとして中国市場に参入する意向を明らかにした。具体的には、両社はコンテンツライセンス契約を締結し、Netflixが自社のオリジナルコンテンツを愛奇芸に提供する形だ(中国は外資規制があり、Netflix単独では市場参入できない)。

 愛奇芸は中国の動画ストリーミングサービス大手で、百度(Baidu)の傘下。契約数は推計約3,000万件。中国は近年、インターネットコンテンツ市場が急成長を遂げており、関連プレイヤーから大きな注目を浴びている。海外の調査によれば、2016年における中国の有料動画サービスのユーザー数は7,500万人で、2015年の2,200万人から3倍超も伸びている。

 ただし、パートナーの確保にこぎ着けたNetflixにとってまだ楽観できないのは、今回の間接的な市場参入について中国当局の認可を得られているわけではないという点だ。中国は様々な事業を展開するうえで複雑な特殊事情がある。例えば、当局に不適切と判断された映像のシーンがブロックされることがある。

 中国政府はインターネットコンテンツへの検閲を年々強めている。Netflixがこれらをクリアして、中国市場への参入を果たせるかが次の大きなマイルストーンの1つになるだろう。