インドのスマートフォン市場は依然として2ケタ成長を続けている。低価格化が進み、ついには「800円スマホ」も登場するなど、価格競争が激しくなっている。一方の中国スマホ市場はメーカー別シェアに異変が見られる。地場メーカーの台頭により、韓国サムスン電子が上位から消えてしまった。両国のスマホ市場を分析する。

 IDC Indiaは2016年2月16日、インドにおける携帯電話出荷台数を発表した。それによると、2015年第4四半期(10〜12月)に出荷されたスマートフォンは前年同期比15.4%増の2560万台だった。インドでは廉価なフィーチャーフォンが依然としてメインであり、出荷全体の60%を占める。それでも年々進むスマホの低価格化によって、通期では前年比28.8%増の1億360万台とついに1億台を突破した。

 インドのスマホ市場では地場メーカーの台頭が著しい。2015年第4四半期のメーカー別シェアでは、マイクロマックス(Micromax)、インテックス(Intex)、ラバ(Lava)など常連の人気地場メーカーが上位につけている(表1)。ただし地場メーカーを合計したシェアは38%となり、前年同期の43%から5ポイント下落した。一方で、2014年第4四半期には15%だった中国メーカーのシェアは2015年第4四半期には22%へと増加した。

表1●インドのスマートフォン出荷台数におけるメーカー別シェア
表1●インドのスマートフォン出荷台数におけるメーカー別シェア
出典:IDCプレスリリース
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 もっとも第4四半期はクリスマスシーズンであり、各メーカーがインドのみならず世界中であらゆるキャンペーンを仕掛けてくる。このため「インドにおいて地場メーカーの人気が落ちて、中国メーカーが台頭している」と判断するのは早計で、もっと長い目で見る必要がある。

インドで“800円スマホ”が登場

 2016年2月、インドで500ルピー(約800円)のスマホが登場した。リンギング・ベルズ(Ringing Bells)という2015年に設立されたばかりの地場メーカーが発売した「Freedom 251」である。初日だけで3万台のオーダーがあり、同社は2016年6月末までに250万台の販売を見込んでいる。

 現在のインドで売れ筋のスマホは100〜300米ドルのミドルレンジ製品である。リンギング・ベルズのような安価な端末が大量に流通してくるようになると、インドでのスマホ普及はますます加速していくだろう。

 2015年第4四半期のシェア4位にランクインしているインテックスも100米ドル以下の3Gスマホを大量に出荷しており、総出荷台数は前年同期比で40.9%増だった。

 インドでは「Make in India」のスローガンを掲げるナレンドラ・モディ首相のイニシアティブの下、国内での端末製造やアプリ開発などを積極的に推進している。これは情報通信技術分野に限らず、あらゆる産業でインドの技術力向上を目指そうとする取り組みである。地場メーカーの多くがインド国内に工場も建設しており、インド人の雇用創出にも貢献している。