CDNといえば、米アカマイ・テクノロジーズをはじめ専門の事業者が提供するサービス──その状況が変わりつつある。米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト、米IBM、米グーグルといった大手クラウド事業者がオプションサービスとしてCDNを提供し始めた。その狙いや通信事業者に与える影響を解説する。

 クラウドサービスの活用が進むにつれ、遅延によるパフォーマンスの低下が懸念されるようになった。特に、インターネットを経由するパブリッククラウドの利用では、他の企業とネットワークリソースをシェアするため、遅延を課題として指摘する声が高まっている。また、パブリッククラウドにおけるネットワーク費用は従量制の場合が多く、利用が増えるにつれコスト管理が問題となってくる。

 この解決策の一つとして、米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト、米IBM、米グーグルといった大手クラウド事業者が軒並み、コンテンツ配信を強化・効率化するCDN(Content Delivery Network)機能をオプションとして提供するようになった。遅延対策やピークトラフィックへの対応、コスト削減に活用されている。CDN事業者と提携する動きもある。

クラウド大手がこぞって提供

 アマゾンは同社のAWS(Amazon Web Services)において、CDN機能「Amazon CloudFront」を提供している。同サービスにおいては、世界55カ所の「エッジロケーション」から成る「グローバルエッジネットワーク」でコンテンツが配信される。画像やスタイルシートといった静的なコンテンツだけではなく、動画や動的なコンテンツにも対応している。価格はリージョンごとに定められており、データ転送量とHTTPメソッドのリクエスト数で決まる(表1)。

表1●クラウド事業者のCDNサービスの例
表1●クラウド事業者のCDNサービスの例
料金は代表的なものであり、サービスによっては無料利用枠なども存在するため、実態は複雑である。なお、単純比較できない米グーグルの料金はこの表からは省いた。    *1 米国の場合 *2 米国・欧州の場合 BLOB:Binary Large Object
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 マイクロソフトは「Microsoft Azure」でCDN機能を提供している。このサービスでは、世界38カ所のPoP(Point of Presence)からコンテンツが配信される。対応するのはBLOB(Binary Large Object)と静的コンテンツである。サービスは「Standard CDN」と「Premium CDN」に分かれており、前者では負荷分散、配信先国の管理などの基本機能、後者では加えてルールエンジン、リアルタイム分析などの追加機能が提供される。価格はゾーンにより異なる。

 なお、マイクロソフトは2015年9月にアカマイとの提携によるCDNの強化を発表した。それに先立つ2015年1月には、米ベライゾン デジタルメディアサービス(旧エッジキャスト・ネットワークス)との提携が報じられた。マイクロソフトはCDN機能をメニューとして提供するものの、システムとしては自社開発・構築するのではなく、専業他社とのパートナリングにより提供しているものとみられる。

 このほか、IBM傘下のSoftLayerもCDN機能を提供している。同社も旧エッジキャストと提携してサービスを提供しており、このサービスでは同社のデータセンターとPoPに加え、世界24カ所のノードからコンテンツの配信を行っている。