業界構造が大きく変わりそうな予兆がみられる中国通信市場。2016年1月に、大手通信事業者(キャリア)3社のうちの中国電信と中国聯通が大規模な提携を発表した。現時点では合併の可能性を否定するものの、提携の内容には今後のキャリア間連携モデルを占ううえで注目すべき点が多い。

 2016年1月13日、中国電信(China Telecom)中国聯通(China Unicom)の2社が戦略的提携協定に調印した。中国3大キャリアのうちの2社が、設備の共同建設・共用、サービスなどで全面的に業務協力するという異例の内容だ。中国電信と中国聯通は2015年8月末にトップが相互に入れ替わるという仰天人事を敢行したが、その際に両社が近い将来合併するのではないかという憶測も伝えられていた。中国電信の楊傑・総経理(董事長代行)は提携発表の場で、「今回の提携は中国電信と中国聯通が合併するという話でなく、双方とも完全な競争主体である」として合併の可能性を否定した。

 そこで、「中国は特殊だから日本の参考にならない」と切り捨てず、そのようなバイアスのかかった先入観を排除して両社の提携内容を眺めてみたい。ある意味まだ世界のどこでも実行されていない新たなタイプのキャリア間提携という視点である。

5つの具体的な協力事項

 今回の中国電信と中国聯通の提携内容を改めて両社のニュースリリース資料からみてみよう。両社の戦略的提携のコンセプトは、中国語で「資源共建共享、客戸服務提質」となっており、これはリソースの共用、顧客サービスの品質向上を意味する。両社はこの提携を通じ、「顧客サービス向上計画」を全面的に実施、中央国有企業の責任を果たすことで、今年から5年間の国家戦略「第13次5カ年計画」(2016〜2020年)が提起する「イノベーション、コラボレーション、グリーン、オープン、シェア」という理念の実現に貢献するため、次の3つを目標としている。

(1)ネットワークやサービスを含む各種リソースのオープン化、シェアリング、新サービス開発や財務などの各レイヤーでの提携を通じ、業界発展の新たなモデルを導出する。

(2)ネットワークや端末など、共同でサプライサイドの構造改革を行い、コスト削減および運営の効率化を図るとともに、顧客価値を向上させ、「情報消費」を促進する。

(3)「大衆創業、万衆創新(起業促進、国民全体のイノベーション)」のための情報サービス環境を改善し、政府の「『インターネット+』「『中国製造2025』各計画の推進を後押しする。

 このような前提の下、両社は具体的に以下の5つについて協力をしていくことに合意している。

(a)ネットワークの共同建設・利用をさらに推進することにより、カバレッジを広げサービス提供能力を向上させる。重大災害や突発事件など重要な安全保障が要求される下で相互に協力しサービス復旧を図ることで緊急通信能力を高める。

(b)豊富な端末の品ぞろえにより顧客の多様化するニーズをさらに満足させる。共同で6モード(両社および中国移動が提供する2G〜4G各方式であるGSM、CDMA、TD-SCDMA、W-CDMA、TD-LTE、FDD-LTEの6つ)をカバーする「全網通」端末を国家標準とする。

(c)ネットワークの相互接続品質を高め、顧客のサービス認知を高める。

(d)新たなメカニズム、市場運営によりサービス連携のイノベーションを図る。

(e)国外キャリアと国際ローミングで連携し、サービス品質を向上する。