英国では「部分的空白スポット」と呼ばれる携帯のつながりにくいエリアが、ルーラルを中心に国土の21%を占めている。こうしたルーラルのカバレッジ向上に50 億ポンドのネットワーク投資を行うことで、英国政府とモバイル大手4事業者が合意した。その裏には、政府と事業者の間には虚々実々の駆け引きがあった。

 英国文化メディアスポーツ省(DCMS)は2014年12月18日、モバイル事業者のEE、O2UK、ボーダフォンUK、3UKの4社が合計50億ポンドのネットワーク投資を行うことで政府と合意したと発表した。目的はルーラル地域などを対象とした地理的カバレッジの向上。2017年までに90%の達成を義務付けた。この合意に至るまで、英国政府とモバイル事業者の間では半年を超える交渉があった。

「つながらない」を解消へ政府が本腰

 規制当局のオフコム(英国情報通信庁)が2014年3月に実施したモバイル信号受信状況についての消費者調査では、どのぐらいの頻度で携帯端末が通じなくなるかという質問に対して、ルーラル地域では17%、遠隔ルーラル地域では28%という結果だった(図1)。

図1●モバイルサービスで「信号なし」もしくは「受信不可」となる頻度
図1●モバイルサービスで「信号なし」もしくは「受信不可」となる頻度
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 同庁のインフラレポート(2014年)によると、英国国土の11%に相当する面積がモバイル通信のカバレッジから外れている。そして1社以上のモバイル事業者でカバーされているものの、全4社のカバーには至らない「部分的空白スポット」が21%あると推定されている。このエリアではある会社の携帯電話はつながるが、別の会社は信号が弱すぎてつながらないことがある。例えば、デービッド・キャメロン首相が、携帯がつながらないという理由で保養先から戻らざるを得なくなったというエピソードもある。

 政府は今回、こうしたエリアについてモバイル業界に改善を要求した。文化省は2014年6月にモバイルカバレッジの拡大を実現するためにローミング義務を検討すると発言した。モバイル業界は直ちに反発、政府との合意は不成立に終わり、11月に文化省はコンサルテーションの実施に踏み切った。