2015年11月27日、スマートフォン向け放送サービス「NOTTV(ノッティーヴィー)」を運営するmmbiは、2016年6月30日で、NOTTVサービスを終了することを発表した。また、ジャパン・モバイルキャスティングが提供する「モバキャス」サービスも併せて終了する。NOTTVは日本初のスマートフォン向け放送サービスとして2012年4月に開局し、NTTドコモのスマートフォンやタブレット向けに映像コンテンツを提供してきた。

 2015年4月に行われたドコモの2014年度の業績発表では、mmbiの資産について302億円の減産処理を行ったために、スマートライフ事業の赤字の要因となった。また2015年6月の決算によるとmmbiの売上高は前年比2.6倍の156億円とはなったものの、営業損失は28億円だった。経常損失は316億円、当期純損失は503億円と赤字幅は前年同期の168億円の赤字から大きく拡大しており、今後黒字化に向けて事業を展開していくのは難しかったのだろう。

 本稿ではNOTTVをめぐる動向と加入者の推移や、NOTTVがうまくいかなかった背景を整理し、今後の定額制動画配信(SVOD:Subscription Video On Demand)時代に求められるコンテンツの在り方について見ていきたい。

NOTTVをめぐる主要な動向

 NOTTVは、2012年4月から放送が開始された。サービス開始前からの主要動向を時系列にまとめておく(表1)。

 NOTTVがスマートフォンで放送を開始するまでには、NTTドコモやフジテレビなどテレビ局らで設立したマルチメディア放送(現在のmmbi)が推進する「ISDB-Tmm」規格と、KDDIとクアルコムジャパンが共同設立し「MediaFLO」規格を推進するメディアフロージャパン企画の両陣営で、2011年に停波するアナログテレビのVHF帯(207.5M〜222MHzの14.5MHz幅)を用いて提供する「携帯端末向けマルチメディア放送」の1枠の周波数をめぐって争っていた。そして2010年9月に、総務省から諮問された電波監理審議会において「mmbiの方が適当」と答申があった。その答申を受けた当時の原口一博総務大臣から、mmbiへ認定書が交付、つまり免許が付与された。

表1●NOTTVをめぐる主要な動向
表1●NOTTVをめぐる主要な動向
mmbi発表資料を元に作成。2011年11月29日増資後、増資前15億円(資本金8.4億円+資本準備金6.6億円)から496億円(資本金248.9億円+資本準備金247.1億円)と大幅に増資された。
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 2011年11月29日の増資後、増資前15億円(資本金8.4億円+資本準備金6.6億円)から496億円(資本金248.9億円+資本準備金247.1億円)と大幅に増資された(表2)。

表2●mmbiの株主構成
表2●mmbiの株主構成
出所:mmbi
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