通信市場の再編が顕著に進むEU(欧州連合)。それも単なるM&A(合併・買収)ではなく、固定ネットワークとモバイルネットワークの統合を伴うものだ。最近は「クアッドプレイサービス」という具体的な形になって見えてきている。米国や日本など他の先進市場ではあまり見られないEU市場固有の動向を解説する。

 EU(欧州連合)では2014年、多くの通信事業者が「クアッドプレイサービス」の提供に向けて固定ネットワークとモバイルネットワークの統合に動いた。クアッドプレイサービスとは、固定回線による音声、インターネット接続、映像、そしてモバイルの4つをバンドルしたパッケージサービスのことである。

 背景には厳しさを増すEUの通信市場環境がある。通信事業者はもはや固定サービスだけ、あるいはモバイルサービスだけでは生き残れない。固定専業の通信事業者はモバイルサービスを、片やモバイル専業の通信事業者は固定サービスをそれぞれポートフォリオに加えようとしている。

 具体的にはMVNO(仮想移動体通信事業者)やFVNO(仮想固定通信事業者)のフィージビリティーを検討し、スモールセルやWi-Fi(無線LAN)エリアの自前での展開、M&A(合併・買収)を視野に入れ始めた。

スペイン、ドイツ、ベルギーでも開始

 EU主要各国のクアッドプレイサービスは、2010年から提供しているフランス・オレンジの「Open」を皮切りに今や百花繚乱の様相を呈している。スペインのテレフォニカの「Fusión」、ドイツテレコムの「MegentaEINS」、ベルギーのベルガコムの「Pack Proximus」はいずれも2014年に提供が始まった。このうちドイツテレコムは宅内環境を重要視しており、固定(光)、LTE、Wi-Fiを束ねて通信を高速化できる機能を持つ宅内向けルーターを投入する計画だ。