米アップルは2016年3月21日、深刻なセキュリティ問題を解消したiOS 9.3をリリースした。しかし、Safariなどのアプリでリンクをタップするとフリーズしてしまう問題があることや、iPad Airなどの旧機種でiOS 9.3への更新時にアクティベーション関連のトラブルが生じることが判明。わずか10日後に問題を解消したiOS 9.3.1をリリースした。iOS 9.3.1リリースまでの経緯について紹介する。

 米アップルは2016年3月21日、同社が販売するモバイル機器向けのOSの新版「iOS 9.3」をリリースした。詳しくは後述するが、同版では、1970年5月以前の日時を設定して再起動した場合に一部の端末が利用不可能になる問題が解消されたほか、いくつかの深刻なセキュリティホールが解消されている。

 しかしリリース後、iPad Air以前の旧機種でiOS 9.3への更新時にアクティベーション(端末認証)関連のトラブルが生じる場合があることが分かった。具体的には、iOS 9.3への更新後にApple IDとパスワードの入力を求められ、それらを正しく入力しないとアクティベーション処理を完了できずに端末を利用できなくなってしまうケースがある。また、GSMモデルのiPad 2では、アクティベーションサーバーに接続できない問題が生じる恐れがある。

 アップルはこれらの問題への対処法をWebページに掲載するとともに、iPad Air以前のiPad、iPad mini 2以前のiPad mini、iPhone 5s以前のiPhone、第5世代のiPod touch向けのiOS 9.3の配信を一度停止した。不具合を修正して配信を再開したのは3月28日のことである。

 さらにiOS 9.3には、Safariなどのアプリでリンクをタップすると、アプリがフリーズまたは強制終了してしまう問題があることが分かった。そこで同社は、iOS 9.3のリリースからわずか10日後の3月31日に、この問題を解消した「iOS 9.3.1」をリリースした。

目玉機能は「Night Shift」

 iOS 9.3/9.3.1の主な新機能と改良点を表1に挙げた。

表1●iOS 9.3/9.3.1の主な新機能・改良点
表1●iOS 9.3/9.3.1の主な新機能・改良点
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 これで分かる通り、細々とした改良点はあるものの、使い勝手を大きく変える新機能は見当たらない。目玉機能と言えるのは、夜間に画面の減光と色温度低下(いわゆるブルーライトカット)をして目の負担を低下させる「Night Shift」程度である。

 このNight Shift機能は、Apple A7以降のプロセッサを搭載する64ビット端末でしか利用できない。同機能と同等の処理は特にプロセッサに負担をかけずに実現できるため、技術的な理由での制限とは考えにくい。買い替えを促す販売戦略上の理由か、動作テストやコード管理の負荷抑制などが理由として考えられる。同社が最近、類似機能を提供する複数のアプリをApp Storeから削除していることを鑑みると、販売戦略上の理由が大きいのかもしれない。

 その他の新機能としては、Notesで作成したメモの情報をTouch IDやパスワードで保護する機能が挙げられる。同機能でメモを保護するには、Notesの画面に表示される共有アイコンをクリックして表示される画面で「メモをロック」を選択する。続いて表示されるパスワード設定画面でパスワードを設定するか、「Touch IDを使用」を選択する。

 なお、Notesで作成したメモの最初の行はタイトルとして扱われる。タイトルはメモをロックした状態でも表示されるため、重要な情報はタイトルの後に書くよう注意する必要がある。