米Netflixや米Amazon.comのネット向けビデオ配信サービスが日本市場でも普及し始めている。DAZNも配信システムの安定化が進み認知度も急速に上がってきている。

 本稿では、衛星・ケーブルでの番組供給の老舗である東北新社が展開するIPリニア配信を、実際のブロードバンド環境で視聴を試みた。

今秋からスターチャンネルが開始

図1●スターチャンネルがインターネットTVサービスを10月開始
図1●スターチャンネルがインターネットTVサービスを10月開始
(出所:スター・チャンネル)
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 日本市場でもいよいよ放送番組をネット環境下でサイマル視聴する時代が到来したようだ。この10月1日からは、プレミアム映画専門チャンネルの代表格であるスターチャンネル(運営会社は東北新社子会社のスター・チャンネル)がプレミア、セレクト、吹替専門の3チャンネルの放送番組をそのままインターネットTVとして、月額2480円で配信をスタートした(著作権の関係で一部番組の差替えがある)。

 1989年CSが打ち上がると、スクランブル(スカイポート方式)をかけて洋画専門チャンネルを開始させたのがスターチャンネルである。WOWOWすらまだ開局する前であったが、ケーブルテレビ向けにビデオテープによる番組供給で実績を作っていたため、都市型ケーブルテレビにとってプレミア洋画番組のブランドとして急速に導入が進んだ経緯がある。1990年代のCSプラットフォームの多チャンネル化や、BSデジタル放送の開始時にも真っ先に登場したのはスターチャンネルである。こうした先進性がこのIPサイマルサービスを生んだ背景ではないかとも思われる。

 日本市場では、エンドユーザーがプレミアム洋画コンテンツに接するには、長らく衛星放送やケーブルテレビ、地上波の先行番組などが主であった。ところがNetflixやAmazon Prime Video、日本テレビが買収したHulu、さらにはNTTドコモが提供するdTVなどのネット配信番組の認知が進み、洋画コンテンツの何がプレミアムなのかが判然としなくなってきているところである。

 隣接著作権の運用が欧米とは大きく異なる日本市場では、ネット配信下では吹替え(サウンドラック)や字幕にも著作権の処理費用が大きくかかるが、スターチャンネルはついにIPリニアによる番組サイマル配信に踏み切った。親会社である東北新社の決算が好調である今、VODも含めたネットサービスで顧客を引き留めなければ、多チャンネルサービス加入者が減っていく環境にある日本のコンテンツサービス市場において先行者メリットを維持し続けるのが困難だとの経営者判断があるのだろう。

手軽に多彩なスターチャンネルを楽しむ

 スターチャンネルのインターネットTVサービス版をタブレットで利用した。三つのチャンネルは、切り替えるのにテレビリモコンを手にする必要もなく、リニアチャンネルの画面をタッチするだけで視聴できる。また、リニアチャンネルに飽きた場合は、VODに切り替えて140本あまりのタイトル(11月4日時点で、配信前のタイトルを除いて筆者が確認した。ドラマを除く)で好きな洋画を探して視聴できるのがとてもよい。

 筆者はBSスターチャンネル201で昨年のヒット作洋画「キアヌ」を55インチのテレビで視聴した後、改めてVODにてタブレット視聴した。キル・ビルのオマージュで日本刀を振り回すシーンを見直すにはVODがとても便利に感じる。また、終了直前のコーナーにはオリジナル劇場版とファイナルカット版の2種類の「ブレードランナー」があり、タブレットでじっくり見比べることができた。

 タブレットにスターチャンネルアプリを導入する際は、インターネット経由で初期登録を行っていく。この際に、様々な特典サービスを受けられる「MY STAR CLUB」に個人データを入力しておくことが肝要だ。例えば、筆者は同チャンネルがレッドカーペットの模様を生中継した第30回東京国際映画祭(2017年10月25日から11月3日)を取材したが、スターチャンネルのWebページやアプリ上では、放送した10月25日以外の映画祭の細かいコンテンツを動画配信している。こういった映画ファン向けの動画なども同CLUBに登録しておくことで、コンテンツ案内やニュース、試写会の応募お知らせなどを受けられる仕組みになっている。

図2●第30回東京国際映画祭で「MY STAR CLUB」加入者限定特典 オープニング「レッドカーペット生中継」など特別番組 放送・配信
図2●第30回東京国際映画祭で「MY STAR CLUB」加入者限定特典 オープニング「レッドカーペット生中継」など特別番組 放送・配信
(出所:スター・チャンネル)
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 配信サーバーはAmazon AWSだという。LTEや無線LANの通信速度が低下すると、画質を落として途切れずに映るような工夫もある。概ね常時1Mbps程度の速度が保てればベストの画質でタブレット鑑賞が行えるだろう。

 なお、J:COM(ジュピターテレコム)の利用者は、J:COMオンデマンド経由でも、スターチャンネルのVODサービスを受けることができる。

図3●J:COM加入者向けのサービス案内画面
図3●J:COM加入者向けのサービス案内画面
(撮影:筆者)
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