楽天は2017年12月1日、MVNO(仮想移動体通信事業者)として展開する通信事業「楽天モバイル」の事業説明会を実施した。11月にプラスワン・マーケティングの「FREETEL」ブランドの通信事業を買収した楽天モバイルだが、大手キャリアが顧客流出防止策を強化したことでMVNO全体が伸び悩む中、どのような戦略で事業を拡大しようとしているのだろうか。
「格安SIM」「格安スマホ」などの名称で注目を浴び、大手キャリアから顧客を奪って急速な伸びを見せてきたMVNO。だが2016年の中ごろから今年にかけて、顧客流出に危機感を抱いた大手キャリアが、通信料金の引き下げやサブブランド(ワイモバイル、UQモバイル)の強化などの顧客流出防止策を強めてきたことで、MVNOの契約数拡大に急ブレーキがかかっている。
その影響を大きく受けた企業の1つが、「FREETEL」ブランドで通信事業を展開していたベンチャー企業、プラスワン・マーケティングだった。同社は多額のコストをかけてテレビCMを放映するなど積極的なプロモーションで会員獲得を進めていたものの、体力があまりないベンチャー企業だけにキャリアの顧客流出防止策のあおりで加入者が伸び悩み、不振に陥って通信事業を売却するに至っている。さらに、同社自体は12月4日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
FREETEL買収で頭一つ抜け出した楽天
通信事業の売却先となったのが、「楽天モバイル」を展開する楽天だ。楽天はプラスワン・マーケティングの通信事業を約5億円で買収。買収が完了した11月1日時点で、楽天のMVNO事業の回線契約数は、楽天モバイルで獲得した105万契約にFREETELブランドの契約数35万を積み増し、140万に達しているという。
12月1日に楽天が実施した楽天モバイルの事業説明会で、楽天モバイル事業の大尾嘉宏人執行役員は、これまでMVNOの個人向けサービスで首位とされてきたインターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmioモバイル」の契約数(97.2万)を抜き、「(MVNOの中では)われわれが1位なのではないかと思っている」と話した。小規模の事業者がひしめくMVNOの市場にあって、楽天が頭一つ抜け出す存在となったことは確かなようだ。
また従来、MVNOの契約者は30代、40代が中心とされてきたが、大尾嘉氏によると、楽天モバイルでは最近、スマートフォンを積極的に活用する20代の契約者が急増しているとのこと。加えてARPU(1回線当たりの月間売上高)も2015年時点の1.4倍に伸びるなど、順調に成長しているとした。加入者獲得のための投資が続いているため事業自体はまだ赤字だが、その赤字幅は大幅に縮小しており、「何度か単月で黒字が出ているときもある」(大尾嘉氏)そうで、大手キャリアの反撃を受けながらも伸びている様子がうかがえる。