今年も残りあと1カ月半。年末に向けて忙しさが増してくる方も多いことでしょう。ことIT業界においては、案件増加と人材不足のダブルパンチで、開発・運用現場に多大なプレッシャーがかかっています。こういうときこそ、体はもちろんのこと「心」の健康管理にも気を付けたいものです。

 そこで今回の週末スペシャルでは、忙しくなる年末を乗り切るためのモチベーションマネジメントについて、読者の皆様からの質問とそれに対する回答という形でご紹介します。指南役は「PM/SE向け モチベーション集中講座」の講師も務めていて、日経SYSTEMSの好評連載「明日香のモチベーション広場」の執筆者でもある野本明日香 氏(JTBモチベーションズ コンサルタント)です。

※質問と回答は日経SYSTEMSの連載「明日香のモチベーション広場」に掲載された内容の一部を加筆・修正したものです。

「スランプだ」と感じたら?

 少し前、仕事で失敗をしました。大きな失敗ではなかったのですが、それ以来、これまでならあり得ないようなミスを連発し、思うように仕事を進めることができません。自分では「スランプではないだろうか」と思っています。こんなとき、どのように自分のモチベーションをコントロールしたらよいでしょうか。

(システムエンジニア、36歳男性)

 スランプに陥ることってありますよね。何をやってもうまくいかず、自分らしくない。自信がなくなり、何かをやってやろうというモチベーションが起きなくなる。

 よく「モチベーションが安定しなくて困るんです」とおっしゃる方がいますが、そもそもモチベーションは上がったり下がったりする性質を持っています。ずっと高いモチベーションを保っているような人もいますが、そんな人でも高いなりに上下しているものです。人間の気分には波があり、絶えず変化しています。だからこそ、学びや成長があるのです。

 スランプに陥ったときの対処法には、いろいろあると思います。私のお勧めは「地固め」です。まずは、自分の状態をきっちりと整えるのです。食事や睡眠をきちんととって健康状態を整え、目の前の仕事を丁寧に手堅くこなします。無理はせずに、攻めと守りでいうなら守りを強化します。

 しっかりと土台を作った上で、自身の中にしこりがあるのなら、それと向き合います。自分自身の気持ちや状態を文章に書き記すのも効果的です。ほかの人に聞いてもらうのもよいでしょう。そして、自分の好きなものに触れたり、元気の出る場所に行ってエネルギーをチャージしたりするのもお勧めです。

 私が感銘を受けた考え方の一つに、「自然界の法則」があります。自然界のものはすべて、次のサイクルにのっとって回っているということです。「創造」→「成長」→「成熟・複雑」→「動乱」→「混沌」→「ドロッピングオフ(手放す)」→「休眠」。これは、経済動向や会社の状態、人生にも当てはまります。創造や成長の時期があれば、うまくいかずに動乱が起きて混沌とする時期があります。それらは次の創造を迎えるための必然だということです。木々が新しい芽を出すためには、前年の秋に葉を枯らせて落とし、厳しい冬にじっと休むことが必要なのと同じですね。

 今のスランプに意味があるとしたら何が考えられるでしょうか。そこから何を学び、次のステージにどのようにつながるかを想像してみると、道が開けるかもしれません。自分がいつスランプから抜けて立ち直るのかを決めてしまうのも一つの方法だと思いますよ。頑張ってください!