Volkswagen(VW)の不正の衝撃が、世界に広がっている。

 次世代のクルマは「Software-Defined-Car」と呼ばれ、ソフトウエアがクルマの性能や機能を決定する。UberやGoogle、Appleが自動運転技術を開発しているが、コンポーネントのほとんどがソフトウエア。ここに不正があれば、交通事故を含む重大な社会問題が発生する。VW問題は、次世代の自動車産業が直面する課題でもある。

シリコンバレーで衝撃が走る

出典: Volkswagen
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 VWの問題は、自動車産業のハブになりつつあるシリコンバレーで、深刻に受け止められている。EPA(米国環境保護庁)は、2015年9月18日、VWのディーゼル車が排ガス試験を不正にクリアーしていたことを公表した。EPAによると、不正は2009年から始まり、対象車種はJetta、Beetle、Audi A3、Golf(上の写真)、Passatなど人気車種が含まれている。全世界で1100万台の車両に不正ソフトウエア(「Defeat Device」と呼ばれる)が搭載され、試験において特定の有害物質の基準を満たすよう機能した。

 EPAは不正行為の詳細について触れていないが、ニュース番組などがそのメカニズムを報道した。不正ソフトウエアの仕組みは次の通りだ。

 不正ソフトウエアは、車両が排ガス試験を受けている時だけ作動し、排ガスに含まれている有害物質の濃度を下げるよう働く。排ガス試験を受けていることを把握するために、不正ソフトウエアは車両の様々なデータを総合的に判断する。ステアリングが一定で、駆動系タイヤだけが回転している状態を試験中と判断する。

 試験中であると認識すると、不正ソフトウエアは排ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)など、有害物質の濃度を低減する。ディーゼルエンジンは、触媒コンバーター(Catalytic Converter)で窒素酸化物を分解する。効率よく分解するには、高温で処理する必要がある。このため、燃料を多く燃やし温度を上げる。これで排ガス試験中は窒素酸化物の濃度が下がり、EPAの基準をクリアーする。

 一方、燃料を多く使うと車両の燃費が下がる。このため、試験が終わると不正ソフトウエアの機能を停止する。このため走行時には、既定の40倍の窒素酸化物を排出する。