総務省の施策によるスマートフォン実質0円販売の禁止や、SIMフリースマホ端末の拡大による海外メーカーの台頭などで、日増しに存在感を失っている日本の大手スマートフォンメーカー。厳しいスマホ市場で、各社は生き残りをかけ、どのような戦略を取ろうとしているのだろうか。
シャープが「AQUOS R」で見せた変化
2017年4月18日、シャープは新しいスマートフォンのフラッグシップモデル「AQUOS R」を発表した。この機種はクアルコムのハイエンドモデル向け最新チップセット「Snapdragon 835」を採用するなど非常に高い性能を備えている。さらに、シャープの技術を活用して独自性を強く打ち出した。
ディスプレーは、WQHD(2560×1440ピクセル)に初めて対応した120Hz駆動の5.3インチ「ハイスピードIGZO」液晶を搭載。指に追従するなめらかな動きを実現し、液晶テレビの技術を活用した「リッチカラーテクノロジーモバイル」によって美しい色合いを再現している。シャープが得意とする液晶技術を多く取り入れた。
メインカメラには2260万画素、画角90度という超広角の撮影が可能なカメラを搭載。シーンに応じて話しかけてくれるAIアシスタント「エモパー」を強化し、専用の充電台「ロボクル」に接続することで、ユーザーのいる方向を認識してそちらを向き、しゃべりかけてくれる仕組みも備えている。
機能・性能的に大幅に強化されたAQUOS Rだが、最も注目すべきポイントはブランドにある。
シャープのスマートフォンはこれまで「AQUOS ZETA」「AQUOS SERIE」「AQUOS Xx」など、キャリアによってブランド名が異なっていた。だがAQUOS Rでは、どのキャリアで発売された場合も、すべて同じ名称に統一した。
ソニーモバイルコミュニケーションズやサムスン電子など、海外メーカーや世界展開するメーカーのスマートフォンでは、1つの端末が同じ名称でキャリアに提供されることは一般的である。
だが、日本メーカーはフィーチャーフォン時代から提供するキャリアに応じてブランド名を変えることが一般的だった。それを考えると今回のシャープの変化は、従来の商習慣を覆す大きなものだ。
さらにシャープは、AQUOS RでのAndroidのOSアップデートを2年間保証するとも発表している。これまではキャリアがプリインストールするアプリがOSアップデートの妨げとなることが多く、キャリアの意向がOSアップデートに非常に大きく影響していた。
それだけに、国内キャリア向けが大部分を占めるシャープが、こうしたアップデート方針を取ることは異例のことであり、それだけAQUOS Rにかける同社の強い姿勢が分かる。