米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)、米テスラのイーロン・マスクCEOなど、IT企業やその経営者が力を入れている宇宙分野の技術開発。何が起きているのか、その最新動向をおさらいしよう。(編集部)



 やっと始まる――。2017年4月から宇宙航空航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターで、日本の次期主力ロケット「H3」の第1段エンジン「LE-9」の燃焼試験が始まった。縦型の燃焼スタンドで、2017年いっぱいをかけて実際にエンジンを運転して、所定の性能を達成するための試験を行う。

 H3は、2020年の初打ち上げを目指している。H3だけではなく、欧州や米国のロケットも2019年から2020年を目指した開発を行っている。また、一足先に新ロケットの打ち上げを成功させた中国やロシアも、2020年に向けて段階的に新ロケットへの更新を行っていく予定で、2020年には世界的に新旧ロケットの交代が起きる見通しとなっている。

 2020年にはどんな新ロケットが宇宙輸送の主役となるのだろうか。

日本のH3は2020年初打ち上げを予定

 日本のH3ロケットは、現在運用しているH-IIA/H-IIBロケットに対して、打ち上げコスト半減を目標としている。

 全長63m、直径5.2m。第1段に新開発のLE-9エンジンを2基ないし3基、第2段には現H-IIA/Bの第2段エンジン「LE-5B-2」をより長時間の燃焼が可能に改修した「LE-5B-3」エンジンを使用する。また第1段の横には固体ロケットブースター「SRB-3」を2本ないし4本を装着できる。第1段エンジンとブースターの数を調節することで柔軟に打ち上げ能力を変更することができるわけだ。

 第1段エンジンとブースターの数は設計上は自由に選べるが、実際に使用するのは、(1)SRB-3なし、LE-9エンジン3基でショートフェアリングの基本バージョン「H3-30S」、(2)SRB-3が2本、LE-9エンジン2基、ショートフェアリング「H3-22S」、(3)SRB-3が2本、LE-9エンジン3基、ロングフェアリング装着の「H3-32L」、(4)SRB-3が4本、LE-9エンジン2基でロングフェアリング装着の「H3-24L」――の4種類。これ以外の組み合わせはコストがかかる割に打ち上げ能力が伸びないとのことだ。

現行のH-IIA/H-IIBとH3の比較
現行のH-IIA/H-IIBとH3の比較
(出所:JAXA)
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 打ち上げ能力は、「H3-30S」が地球を南北に回る極軌道に4トン以上、最大バージョンの「H3-24L」が、静止軌道一歩手前の静止トランスファー軌道に6.5トン以上、とのみ公表されている。