先日開催された「MWC2016」(Mobile World Congress 2016)において、韓国サムスン電子が新型スマートフォン「Galaxy S7/S7 edge」を発表した。防塵防滴構造や時刻を常時点灯できる有機ELディスプレイなどさまざまな特徴を備えているが、なかでも「デュアルフォトダイオード」による高速なAF(オートフォーカス)機能をカメラに搭載したのが興味深いと感じた。スマホでも一眼レフ並みの快適かつ失敗の少ない撮影が可能になる技術として注目できる。従来モデルよりも画素数を減らすという、これまでにない変化も見られた。スマホカメラは、数字を前面に押し出した従来の画素数競争から、快適な撮影や高画質など実利を重視した戦略に変わっていく可能性が出てきた。

サムスン電子が発表した「Galaxy S7」(左)と「Galaxy S7 edge」(右)
サムスン電子が発表した「Galaxy S7」(左)と「Galaxy S7 edge」(右)
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背面のカメラの出っ張りは旧機種の「Galaxy S6」よりも抑えられている
背面のカメラの出っ張りは旧機種の「Galaxy S6」よりも抑えられている
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カメラのAF性能、コントラストAFよりも位相差AFのほうが優れる

 カメラが自動でピント合わせをするAF機能は、デジカメだけでなくスマホのカメラでも不可欠の機能となった。AFは、スマートフォンやコンパクトデジカメで一般的な「コントラストAF」と、デジタル一眼レフカメラなどで使われる「位相差AF」の2種類に大きく分けられる。

 コントラストAFは、イメージセンサー(撮像素子)がとらえた映像のコントラストの差を検出してピントを合わせる方式である。ピントが合った状態が最もコントラストが高くなるので、レンズ位置を少しずつ調整してその最高点を検出する仕組みだ。撮像素子の全面でピント合わせができるメリットがあるものの、AFの速度は比較的遅く、明暗差が少なくなる暗所ではピントが合いづらくなるといった欠点がある。

 位相差AFは、被写体から届いた光が2つに分離して専用のAF用センサーに届き、2つの像の距離を計測することでピント位置を特定する技術だ。AFセンサーが計測した位置に即座にピントを合わせられるためAF速度は高速だが、AF用のセンサーや光を分離するためのレンズの設置スペースなどが必要になる。一般的に、限られた数しかAFセンサーを設置できないため、あらかじめ指定された位置でしかAFが動作できないのもデメリットだ。

ニコン「D5」のファインダー内の様子。四角い枠や点がAFセンサーで、中央部のエリアにしか存在しないことが分かる
ニコン「D5」のファインダー内の様子。四角い枠や点がAFセンサーで、中央部のエリアにしか存在しないことが分かる
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 だが近年では、微細化したAFセンサーを撮像素子内に組み込むことで(像面位相差AFと呼ぶ)、ミラーレス一眼やコンパクトデジカメでも高速な位相差AFが使えるようになった。スマホでも、アップルの「iPhone 6」などの一部機種が採用している。ただ、撮像素子がぎっしり敷き詰められた間を縫ってAFセンサーを設置しなければならず、AFセンサーの数や位相差AFが動作する位置が限られていた。

iPhone 6シリーズが搭載する位相差AF「Focus Pixels」の概念図。左の撮像素子と思われるグラフィックスを見ると、2つ1組で対になったAFセンサーが散在しているのが分かる
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iPhone 6シリーズが搭載する位相差AF「Focus Pixels」の概念図。左の撮像素子と思われるグラフィックスを見ると、2つ1組で対になったAFセンサーが散在しているのが分かる
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iPhone 6シリーズが搭載する位相差AF「Focus Pixels」の概念図。左の撮像素子と思われるグラフィックスを見ると、2つ1組で対になったAFセンサーが散在しているのが分かる

 今回登場したデュアルフォトダイオード技術は、これまでの像面位相差AFの欠点を改良した技術といえる。