アマゾンジャパンは2016年12月5日、「Amazon Dash Button」(以下Dash Button)を発売した(図1)。ボタンを押すだけで自動的に無線LAN経由でインターネットに接続し、Amazon.co.jpに商品を注文するデバイスである。

図1 Amazon Dash Button
図1 Amazon Dash Button
注文する商品ごとにAmazon Dash Buttonを購入する。価格は500円で、初回の商品購入時に購入金額から500円差し引かれて実質無料になる。
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 利用者は「Amazonプライム」会員に限られている。Dash Buttonは500円で販売されているが、初回注文時に500円の割り引きが適用されるので、実質無料で利用できる。

 ボタン型のデバイスが無線通信でインターネットにつながり、Webアプリと連携してサービスを提供するDash Buttonの仕組みは、まさにIoTシステムの典型といえる。

 このDash Buttonが、IoTデバイスとしてどのようにデータをやり取りしているのか。以下では、Dash Buttonを使った商品注文の操作を試すと同時に、そのハードウエア構成や通信パケットも見ていこう。

500円では買えないスペック

 筆者が実際に購入したDash Buttonを分解して基板を確認したところ、ハードウエアは非常に高スペックだった(図2)。化粧箱とボタン本体を含めて、実質無料で配布しているとは思えないレベルである。

図2 Amazon Dash Buttonの内部構造
図2 Amazon Dash Buttonの内部構造
CPUやメモリー、無線LANやBLE対応のBluetoothチップを搭載している。化粧箱付きの製品として価格500円で販売できるスペックではない。
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 縦25×横60mmという小さなケースに、無線LANとBluetoothブルートゥースのチップが搭載されていて、汎用的な通信が可能となっている。プロセッサーは、Cortex-M4コアのMCUを搭載。同程度のスペックのデバイスを購入しようとすると、数千円はかかるのが普通だ。

▼MCU Micro Control Unitの略。CPUやメモリー、I/Oなどを組み込んだ集積回路。

 電源は単4電池1本。MCUなどが3.3Vの電圧で駆動するので、1.5Vを3.3Vに昇圧するレギュレーターが実装されている。電池は注文回数にして約1000回はもつという。