2017年12月、マイクロソフトと、スマートフォン向けのARMプロセッサー「Snapdragon」シリーズなどを開発しているQualcommが、ARMプロセッサーとARM版Windows 10、LTE通信機能、eSIMなどを搭載するノートPCを発表した。スマートフォンのように待ち受け状態でネットワークに常時接続して、メール着信が即座に分かったり、瞬時に起動してオフィスソフトで書類の作成に取り掛かれる。そしてバッテリーは待ち受け状態で1カ月近く持つなどの特徴を持つ。マイクロソフトではこれを「Always Connected PC」と呼んでいる。

Always Connected PCとして発表された、ASUSの「ASUS NovaGo」。2in1タイプのモバイルノートだ
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Always Connected PCとして発表された、HPの「HP ENVY x2」。タブレット型の製品で、キーボード兼カバーを組み合わせる
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 ARM版Windows 10とは、ARMホールディングスが設計したプロセッサーで動作するWindows 10のことだ。ARMホールディングスは設計開発を行うのみで自社でプロセッサーは製造せず、Qualcommなどの半導体メーカーがその設計に基づいたプロセッサーを製造する。これがARMプロセッサーと呼ばれるものだ。ARMプロセッサーは、Androidスマートフォンやタブレットなどで広く使われている。QualcommのSnapdragonシリーズは、その代表格だ。

 ARMプロセッサーのプラットフォームを使うことで、スマートフォンのような常時接続性を得られる、またもともと携帯端末向けのプラットフォームで消費電力が低く、1カ月近い待ち受け時間、20時間以上という駆動時間など、インテル製CPUを搭載するモバイルノートよりも長いバッテリー寿命を実現できる。ただし、実際の製品で重い処理が必要な使い方をした場合、どれだけ長くバッテリー駆動できるかなどの実力はまだ不明だ。

 これまでWindowsは一部の例外を除き、インテルのx86系と呼ばれるCPU、たとえばCore iシリーズやCeleronなどで動作するように作られてきた。ARM版Windows 10は、x86系とは全く異なるARMプロセッサーで動作する。高性能かつ大画面のスマートフォンにWindows 10が搭載されるような形だが、x86系とARMプロセッサーは全く異なるCPUなので、ソフトの互換性が気になる人もいるだろう。

 たとえばマイクロソフトの初代SurfaceはARMプロセッサーと、その上で動作するWindows RTというOSを搭載していた。しかしx86系のCPUで動作するこれまでのWindows用ソフト(デスクトップアプリ)やドライバーなどが動作しないため、人気が出ず短命に終わった。ARMプロセッサーを搭載するスマートフォンで動作するOSとしてWindows Mobileも登場したが、これも同様に短命に終わった。

 そのためAlways Connected PCでは、x86系CPU向けのWindows用ソフトがエミュレーターで動作する仕組みを導入している。ARM版Windows 10もフル機能のWindows 10 S(Windows 10 Proにアップグレード可能)であり、使い勝手は一般のWindows 10と変わらない。Windows RTやWindows Mobileのときとは異なる。

 Always Connected PCはASUSとHPから実際のすでに製品が発表されており、レノボからも登場予定だ。価格はASUSの製品で599または799米ドルを予定している。価格が安いこともあり、モバイルノートの新しい選択肢として人気が出る可能性は高いだろう。