専門家が「2016年のデジタル製品トレンド」を予測する、日経トレンディネットの1月特集。マイクロソフト事情に詳しく、海外の展示会を飛び回るITジャーナリスト山口健太氏は、今年2016年のモバイル業界をどう予測するのか?

山口健太氏の予測は……
【1】格安SIMも「通話定額」に対応へ
【2】「Windowsスマホ」に注目機種が登場
【3】タブレットの大画面化やペン対応が拡大

【予測1】「○○が使い放題」の格安SIMが出てくる

 2015年はまさに「格安SIM元年」とでも呼ぶべき、SIMカードの種類や認知度が急上昇した一年になった。家電量販店ではSIMカードの売り場が広がり、NTTドコモなどの大手キャリアの横にはSIMフリー端末専用のカウンターも登場している。芸能人を起用したプロモーション合戦も相まって、格安SIMの認知度も高まってきた。

 また、追い風も吹いている。2015年末には安倍晋三首相による「携帯料金引き下げ」要請に端を発して、総務省を中心に携帯電話料金に対する議論が活発化しているためである。今後の方向性のひとつとして、格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)に期待される役割はますます大きくなりそうだ。

 こうした状況を踏まえ、2016年には格安SIMの普及がさらに進む可能性が高い。既にMVNO各社は激しい価格競争を繰り広げているものの、まだまだユーザーの需要をカバーできているとは言いがたい。注目ポイントは実店舗、音声通話、そして特定用途に特化したSIMカードだ。

 2015年には楽天モバイルやFREETELが実店舗展開を強化し、SIMフリー端末とSIMカードの販売を強化してきた。2016年はこうした動きがさらに加速するだろう。

 音声通話については「格安SIMの音声定額」に期待だ。これまで「楽天でんわ」のような通話料金を割安にするサービスもあったが、あくまで従量制が基本だった。しかし大手キャリアのような音声通話定額制度をMVNOが導入できれば、通話をメーンにスマホを使う人にも訴求できるはずだ。

 面白い試みとして、特定の用途や条件下で使い放題をうたうSIMカードもある。2015年後半には「iPhoneのアプリダウンロードが無料」や「特定の動画視聴が無料」、「深夜の時間帯だけ使い放題」といったSIMカードが国内で登場した。海外では「音楽ストリーミングが無料」といったプランも存在する。2016年には、このようにSNSや音楽、動画などが使い放題になる格安SIMが注目を浴びるだろう。

楽天モバイルは2015年大阪などに続き、東京・銀座にも実店舗をオープンした。2016年もこうした店舗展開を強化するMVNOが現れそうだ
楽天モバイルは2015年大阪などに続き、東京・銀座にも実店舗をオープンした。2016年もこうした店舗展開を強化するMVNOが現れそうだ
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