IT産業の国際的な業界団体である米BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンスは2018年4月、「デジタル・ガバメント実現に向けて」と題したカンファレンスを東京都内で開催した。世界各国の政府・自治体に対しクラウドの活用を働きかけている同団体のビクトリア A. エスピネルCEOに、日本での電子行政の取り組み状況や課題について見解を聞いた。

(聞き手は井出 一仁=日経BPガバメントテクノロジー)

現時点で日本の行政関係者に向けて最も強く訴えかけたいことは。

エスピネル氏 政府の事業運営や住民サービスの向上にとって、クラウドサービスの導入はますます重要になっているのが現状です。日本政府がデジタル・ガバメントの実現に向けて腐心しているのは十分に承知していますが、そうであればクラウドコンピューティング技術の恩恵を受けられるように環境を整えていく必要があるでしょう。

ビクトリア A. エスピネル Victoria A. Espinel 米BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンス プレジデント兼最高経営責任者(CEO) 
ビクトリア A. エスピネル Victoria A. Espinel 米BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンス プレジデント兼最高経営責任者(CEO) 
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 懸念しているのは、セキュリティ向上のために行政システムをインターネットから切り離す「ネットワーク分離」を政策として推進することです。それではクラウド活用による効率化の恩恵が損なわれてしまいます。政府としてネットワーク分離を進めるアプローチは、世界全体から見て異例です。世界各国の政府の標準的な手法とは一線を画しています。

カンファレンスでは、セキュリティ強じん化のためのネットワーク分離について、全面的ではないけれども評価できる側面もあるという声が自治体から上がりました。

エスピネル氏 自治体が行政システムのセキュリティを強化したいという思いは、よく理解できます。ただ問題は、セキュリティ向上のためのソリューションとしてネットワーク分離が本当に最も効果的なのかという点です。自治体も政府も、最善の形で住民・国民にサービスを提供したいと考えているでしょう。同時にセキュリティも確保したいと考えています。これら2つの目標を両立させるベストのアプローチとは何でしょうか。