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上山信一の「続・自治体改革の突破口」

第182回 火災の犠牲者も被害もまだまだ減らせる

常識を捨ててみよう

上山 信一=慶應義塾大学総合政策学部教授 2017/11/16 日経BPガバメントテクノロジー
出典:メールマガジン「日経BPガバメントテクノロジー・メール」2017年8月10日配信号
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 火事、交通事故など身近な災難は全国的に減っている(震災や豪雨の被害は絶えないが)。

 それでも年間で全国では1400人以上、大阪府でも90人が火災で亡くなり、焼損被害額は全国で752億円、大阪府で36億円にも達する。さらなる努力の余地はないのか、大阪府市が共同で調査をした。すると大阪に限らず全国各地の消防のあり方の参考になる結果が明らかになったので紹介したい。

 (参考)第9回大阪府市副首都推進本部会議資料5
     「副首都実現に向けた都市機能の強化について」(2017年6月20日)

どうすれば被害は減るのか?

 火災の被害(人的、物的)を減らすには、事前の防災(耐火建築などハード面、火の用心、訓練などソフト面)と失火時の消防の両面の強化が必要だ。前者については、日本は優秀だ。燃えやすい家、町の構造だが、火事の発生数は圧倒的に少ない。しかも年々、減ってきている。後者についても消防力は非常に高く、優秀といわれてきた。確かに士気は高く、市民の評価も高い。

 だが、もっと上を目指せないのか。今回は、ミクロの現場の実態(出動態勢、指令のあり方)、現場組織(市町村消防の組織)、広域の連携体制の順にミクロからマクロへと重層的な改善余地の洗い出しを行った。

小さな市町村で火事に会うと助かりにくい?

 調査にあたっては東京消防庁、大阪市消防局、そして大阪府が持っている府下の市町村消防のデータを比較分析した。相互比較をするなかから様々な発見があったが、一番驚いたのが「規模のメリット」だった。消防は東京だけが都全体で運用(一部例外あり)するが、全国どこでも市町村単位で運用している。消防の成果指標は、1件あたりの焼失面積で測ることができ、それと市町村の大きさはおおむね反比例すると分かった。

 例えば大阪府の場合、建物火災1件当たりの焼損面積は、人口30万~70万人の市では約13~20平方メートルであるのに対し、10万人以下の市町村では33~36平方メートルと約2,3倍に広がる。つまり、大阪市や東京消防庁のような大規模組織が消化にあたると明らかに早く火は消え、被害面積は狭くて済む。ところが小規模自治体ではなかなか火が消えず、被害は大きくなる。つまり、あくまで一般論だが「小さな市町村で火事に巻き込まれると死亡と全焼の確率が高い」という法則があるようだ。

 なぜか。大規模組織だと出動できる台数、機材の充実ぶり、動員できる消防士の物量が違う。しかも広域で動き回るのでいろいろなタイプの火災を経験してきており、スキルも高い。

大きな組織と競争原理

 現場の事情だけではない。消防の単位コストは人口30 万~70万人規模の消防組織で最も低く、規模が小さくなるにつれ高くなる。大規模組織では組織と個人の能力開発がやりやすくなる。広域を転勤することでいろいろな現場や組織が経験できるし、高度な機材も使える。

 組織が大きいと職種やキャリアパスも多種多彩で、ハイパーレスキュー部隊や大型組織の長のポストなど魅力的なポストも多い。だから優秀な人材を集めやすいし、そうであるが故にチーム間、個人間での競争と切磋琢磨が起きる。もちろん消防職員は、全国どこでも小規模組織においても使命感に燃え、士気は高い。しかし消防といえども人間集団である。やはり規模による組織としてのパフォーマンスの違いは否めないだろう。

消防の広域一元化は必然の流れ

 消防組織の広域化の意義はかねてより、喧伝(けんでん)され、実際に進みつつある。第1段階は隣接地域間での相互支援協定だ。もっと進むと隣の市町村に委託し規模拡大を図る。あるいは隣接市町村で組合を作る。昨今、水道で広域化のメリットが叫ばれているが同じだ。

 だが、“水平連携”、つまり市町村同士の連携だけでは限界がある。独自路線でやったほうが目先は安く上がるといった財政面の都合、隣接地域との組織統合への現場の抵抗感などが障害となってなかなか進まない。だとすれば上からの改革も考えるべきではないか。つまり、「原則消防は都道府県単位の組織とする」という法改正である。現実には難しいだろうが、人命にかかわる話だ。平成の市町村合併の時のようにインセンティブを付けて一気にやりきれないだろうか。

 「国から都道府県へ」「県から市町村へ」の権限移譲の流れは、福祉、教育など対人サービス、ソフト分野では有効だろう。しかし、水道、下水、消防、感染防止などの防災、インフラ分野では市町村から県への逆の流れ、つまり“垂直連携”が有効に思える。いずれ人口減少や機材の老朽化の問題にも直面する。それを見越し、経営単位の拡大に向けた作業を急ぐべきだ。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山 信一(うえやま・しんいち) 慶應義塾大学総合政策学部教授。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。国土交通省政策評価会委員(座長)、大阪府・市特別顧問、新潟市政策改革本部統括、東京都顧問および都政改革本部特別顧問も務める。専門は経営改革と公共経営。著書に『検証大阪維新改革』(ぎょうせい)、『組織がみるみる変わる改革力』(朝日新書)、『公共経営の再構築-大阪から日本を変える』(日経BP社)、『大阪維新 橋下改革が日本を変える』(角川SSC新書)、『行政の経営分析-大阪市の挑戦』(時事通信社)など多数。

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