6月20日、小池東京都知事は市場移転問題について会見し、結論を「築地は守る。豊洲は活(い)かす」というキーワードで示した。今回は、当日のプレゼンテーション資料や市場問題プロジェクチーム(PT)、市場のあり方戦略本部の資料も手掛かりに、その本質を整理してみたい。

 (参考)小池知事 記者会見資料(2017年6月20日、東京都)

豊洲はどうなる?

 2016年秋に豊洲への市場移転はいったん延期された。これについては安全対策を講じたうえで移転することになった。しかし、豊洲がずっとそのまま中央卸売市場として使われるのかというと、そうとは限らない。築地が再開発された暁には、一部もしくは全部の卸売市場の機能が築地に戻る見込みである。

 残った空きスペースは、冷凍・冷蔵倉庫や物流センターに転用される予定である。2020年以降はフロンガス規制のため冷凍・冷蔵庫が不足する。湾岸地区はもともと高速道路から近く、物流センターや倉庫の需要が根強い。一方で卸売市場の取扱量はどんどん減っている。そうでなくても、豊洲は開場後、ずっと赤字を垂れ流す。よって当面、卸売市場としては使われるが、将来的には用途転用の可能性がある。これが「豊洲は活かす」という意味である。

築地に何が戻るのか?

 豊洲に市場が移転した後、築地はいったん更地にされる。その後、環状2号線の道路工事を経て五輪用の駐車場として使われる。その後、2020年秋には再開発が始まる。その具体的な絵図はまだ描けていないが、食にちなんだテーマパークや飲食・商業、あるいは教育、芸術、スポーツなどが資料には記載されている。

 そして卸売市場の機能も、一部か全部が戻ってくる。「築地を守る」というのは、特に仲卸が培ってきた目利きの能力を維持発展させていくということ、そしてそれを生かした食ビジネスも探究するという意味である。これは、鉄道会社が鉄道を核として百貨店や劇団などを多角経営する構図にも似ている。