この約1年半、筆者は東京都の特別顧問として各局や外郭団体のヒアリングを重ねてきた。その上でしみじみ思うことは、外郭団体の位置づけの変化である。都庁に限らず、自治体は従来の外郭団体に関する固定観念(“天下り敵視“ ”外郭団体性悪説“ ”縮減一辺倒“)を捨てるべき時期にあると思う。今回は筆者の問題意識を紹介したい。

「官から民へ」の限界

 国でも自治体でも外郭団体はややもすれば白眼視されてきた。確かに過去はひどかった。ろくに仕事をしない天下りOBの理事たち、役所の委託契約の独占と民業圧迫、過剰な人員配置、昇進の道を閉ざされやる気のないプロパー職員たち・・・など。こうした実態は、財政危機の中で多くの団体が改革を迫られ、かなり改善された。しかし、企業に比べるとまだまだ甘いところがあり、今後も監視する必要がある。

 一方、もっと大きな視点から見ると、外郭団体を取り巻く状況は大きく変わっている。

 第1にIT化を背景とする世の中全体のアウトソーシングの進展である。役所のみならず、民間企業でも本来業務以外の仕事は外に出す、つまり「餅は餅屋」の専門企業に出すのが当たり前となり、自前主義は捨てて当然という時代になった。人材派遣や請負契約、施設管理などの専門企業は、数も規模も拡大し、それらを子会社として育成する大企業も増えた。

 第2には深刻な人手不足、特に専門人材の払底である。ITエンジニアにしろ看護師にしろ、専門人材は全国的に不足している。行政機関でも最近、ITや福祉などのプロ人材を中途採用などで増強しているが追いつかない。しかも役所の仕事はますます高度化、専門化していく。その一方で役所の場合、頻繁に人事異動がある。専門人材の配置は常に手薄になる。それを補うとなると、どうしても庁外に供給源を求めざるを得ない。

 だが役所の業務の中には、民間企業に外注しにくい特殊なあるいは非定型な業務がある。しかも原資は税金だから高額での発注もできない。そこで外郭団体が必要になる。外郭団体だと、人事異動の多い公務員にはなりたくないが専門を生かして世のためになる仕事をしたいという人材を集めやすい。給与は民間ほど高くはないが、役所のブランドに裏打ちされ、一定の社会的地位と安定した雇用環境が用意できる。

 かつての外郭団体は役所のOBの受け皿だった。しかし、今は庁外の専門職人材を獲得する大事な受け皿となりつつある。

 第3には役所のOBについても再雇用や定年延長の動きがある。企業では60歳定年を超え65歳、さらには70歳まで再雇用する動きが顕著だ。定年後も仕事を続ける高齢者が増えている。そのほうが健康にもよく、世の中全体の人手不足に貢献できる。企業も自治体も再雇用の場の提供が求められている。

 かくして本庁でも外郭団体でも、一定数の役所OBがいるのは当然という時代になってきた。公務員だって労働者だ。公務員の再就職先となると専門ノウハウを生かせる公的分野になるのは仕方がない。本人の経歴や経験が生かせる仕事なら外郭団体への再就職は認め、一概に天下りと批判はしないという流れができていくだろう。