先週、中国の広州と昆明を旅した。驚いたのは、個人所有の自転車がほとんどなくなり、街中にシェアバイクが走っていたことだ。自動車のライドシェア(相乗り)も進む。Uberの中国ビジネスを現地企業が買収し、破竹の勢いで伸び、タクシーがずいぶん減った。カーシェアの電気自動車もずいぶん普及し、街中のちょっとした駐車場にも充電スタンドがある。IT、省エネ、排ガス規制に向けた政府の意思の強さを感じた。

ITで大きく変わる公共交通の姿

 中国だけではない。ITによって世界中で都市の公共交通の生産性が飛躍的に上がり、その姿が大きく変わりそうだ。自動運転が発達すればトラック輸送が夜間にシフトし道路が空く。混雑状況に合わせて制限速度や料金が変わる(ピークロードプライシング)スマート有料道路も出てくる。自動運転を待たずとも今のような大規模な橋や駐車場の投資は不要となり、インフラ更新の予算は大幅縮減できるだろう。

都市の鉄道のモデルが変わる

 鉄道はどうか。人口の高齢化や鉄道会社の収益力低下を考えると、従来の常識やこの20年来の単純な民営化論は見直すべき時期に来ていると思う。例えば東京についても以下に代表される従来の改革論は見直すべき時期に来ているだろう。

(1)「公営地下鉄(東京メトロ、都営)は新線建設が終わったらともに民営化し私鉄大手と同様に株式上場すべきだ」
(2)「都営地下鉄と東京メトロ(営団)は合併すべきだ」

 筆者はこの2つの議論はいずれも時代遅れであり、正解はこうではないかと考える。

(1)「公営地下鉄は新線建設が終わったら民営化(株式会社化)すべきだが、自治体が株式の過半を持ち続けるか、黄金株を持つべきで、全株を上場売却すべきではない」

(2)「都営地下鉄と東京メトロは別会社のままで構わない。ただし、公共交通の視点から運賃や利便性は同一基準とすべきであり、株主の自治体が公共性の視点から調整すべきである。なお自治体は上場益の代わりに毎年、配当を受け取り、それを周辺部を含む公共交通の経営支援や整備に充てるべきである」