このところ、米Amazon.comのAI(人工知能)アシスタントに関する動きが面白い。Amazonには「Alexa」と呼ぶ、AIを使ったクラウドベースの音声アシスタントサービスがあるが、同社はこれを利用できる機器を小型化したり、ほかの自社製機器に搭載したりして、サービスの拡大を狙っている。

映像配信端末の廉価版にAIアシスタントを搭載

 そのうちの1つが、先ごろ発表した「Fire TV Stick with Alexa Voice Remote」。これは、2014年に発売したスティック型映像配信端末「Fire TV Stick」の第2世代モデルだ。

 Fire TV Stickは、テレビのHDMIポートに差し込んで、無線LANでインターネットに接続すると、ストリーミング映像などが手軽に楽しめるという機器。Amazonの映像配信サービス「Amazon Video」、Prime会員向けの映像見放題サービス「Prime Video」、音楽聴き放題サービス「Prime Music」をはじめ、Netflix、Hulu、YouTubeといった他社サービスも利用できる。

 この第2世代モデルは、その名の通り、同社の音声アシスタントサービスであるAlexaが利用できる点が特徴で、上位モデルの「Fire TV」と同じくAlexaに対応した音声認識リモコンが付属する。これにより、ユーザーはリモコンのマイクボタンを押して話すだけで、30万以上の映画やテレビ番組、90以上のアプリやチャンネルの中から好みのコンテンツを検索できるほか、Alexaに対応するさまざまなサービスを利用できる。

 そして、Amazonの最近の戦略が明確に表れているのが、この新モデルの価格だ。Fire TV Stick with Alexa Voice Remoteの価格は39.99ドルで、2年前に発売した初代モデルの39ドルとほぼ同じ。ただ、初代モデルの廉価版は音声認識リモコンが付属しておらず、これを利用したい場合は、より高額なセットモデルか、30ドルの別売り音声認識リモコンを購入する必要があった。しかもこのリモコンはコンテンツを検索できるだけというもので、Alexaは利用できなかった(米Wall Street Journalの記事)。

 Amazonが発売済み、または今後発売予定のAlexa対応機器には、単体の音声アシスタント端末「Amazon Echo」(179.99ドル)や映像配信端末の上位モデル「Fire TV」(99.99ドル)、タブレット端末の最新モデル「Fire HD 8」(89.99ドルから)などがあるが、いずれも価格はFire TV Stickの2倍以上。つまり同社は今回、Alexaを利用できる機器の価格を大幅に引き下げたというわけだ。

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