先ごろ米Appleが、オリジナルの映像作品の調達・制作費用として、今後1年間で約10億ドル(約1100億円)を投じる計画だと伝えられ、話題になった。これを報じたのは米Wall Street Journalの2017年8月16日付の記事。記事によると、Appleはこの予算を使って今後、最大10本のテレビ番組を調達するか、独自に番組を制作するという。

ハリウッドのベテランが映像番組部門を統括

 実は、この報道に先立つ今年6月、同社は米Sony Pictures Entertainment傘下のテレビ番組制作会社Sony Pictures Televisionから2人の幹部を迎え入れると発表した。その人物とは、2005年からSony Pictures Televisionで共同社長を務めてきたJamie Erlicht氏と、Zack van Amburg氏。両氏は過去10年間、数多くのヒット番組に携わってきたことで知られる人物である。代表的な番組には、犯罪ドラマシリーズ「Breaking Bad」や、伝記ドラマシリーズ「The Crown」などがある。

 そして両氏は今夏から、iTunes StoreやApple Musicといったインターネットサービスなどを統括するシニアバイスプレジデント、Eddy Cue氏の直属となり、Appleの映像番組部門を率いていくと、Appleは説明していた。

 今回のWall Street Journalの報道によると、Erlicht氏とAmburg氏は8月にAppleのロサンゼルスオフィスで仕事を開始した。今後両氏は、Apple Musicのチームが担っている映像番組制作に関する責任を引き継ぐ。そして10億ドルの予算は、Erlicht氏とAmburg氏管理の下で使われると、同紙は伝えている。

Appleのテレビサービス構想、復活か

  Appleは最近、徐々にだがオリジナルコンテンツに力を入れ始めている。例えば前述した有料音楽配信サービスApple Music内で、アプリ開発者発掘番組「Planet of the Apps アプリケーションの世界」や、音楽ドキュメンタリー番組を配信している。また同社は、米人気トークショーの名物コーナー「Carpool Karaoke」の権利を取得し、今年8月から世界100カ国のApple Music会員に独占番組を配信している(発表資料)。

 Appleは現在、Apple Musicをこうしたオリジナルコンテンツの配信媒体にしている。しかし、今後はサービスを拡充し、それに伴いテレビサービス事業を本格展開する可能性があるといった観測が流れている。

 Appleの映像コンテンツ配信事業については、かねてより同社が定額制のテレビサービスを計画しているとの観測が出ていたが、Appleはその計画の中断を余儀なくされたと伝えられている。海外メディアによると、同社は十数チャンネルをまとめた月額料金30~40ドルのテレビサービスを計画していた。しかし、メディア企業とコンテンツの配信料について協議がまとまらず、計画を断念したという経緯がある。