先ごろ米Amazon.comが発表した決算(2017年4~6月期)は売上高が379億6000万ドルで、前年同期に比べ24.8%増加したが、純利益(最終利益)は、わずか1億9700万ドルとなり、同77%減少した。

 その主な要因は営業費用がかさんだこと。売上原価の売上高に占める比率は、好調だった昨年10~12月期よりも低い水準に抑えられたものの、配送センターなどの物流にかかる費用や、マーケティング費用が引き続き膨らんだ。とりわけ、次世代の製品/サービスの基盤となるテクノロジー分野への投資と、コンテンツにかかる費用が前年同期から43%増加し、利益を圧迫した。

Amazonはいつも薄利の企業

 ただ、Amazonのこうした低い利益率は今に始まったことではない。例えば昨年10~12月期における同社の売上高は437億4000万ドルだったが、その営業利益は12億5500万ドルと、3%未満だった。これと比較するため、米Appleの決算(昨年10~12月期)を見ると、その売上高は783億5100万ドル。営業利益は233億5900万ドルで、営業利益率はほぼ3割とAmazonより1桁多い。

 AmazonとAppleでは業種が異なるため、こうした違いが出るのは当然かもしれない。しかし、Amazonが上場した1997年からこれまで20年の経緯を見ると、売上高は上昇の一途を辿っているにもかかわらず、その最終損益は、極めて低い水準か、赤字のいずれかだ(図1)。

Amazon.comの売上高と最終損益の推移
Amazon.comの売上高と最終損益の推移
(インフォグラフィクス出所:ドイツStatista
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クラウド事業がAmazonを支える

 さらに興味深いのは、クラウド事業である「AWS(Amazon Web Services)」の業績だ。ここ数四半期の同事業の営業利益は約9億ドルで推移しているが、その同社全体の営業利益に占める比率が拡大しているのだ。例えば昨年10~12月期におけるクラウド事業の営業利益は9億2600万ドルで、全営業利益の7割を占めていた。つまりAmazonの営業利益の大半は、このクラウド事業によってもたらされている。

 そして、今年1~3月期では、その比率がほぼ9割に達し、今回の4~6月期に至っては、クラウド事業の営業利益がAmazon全体の営業利益を上回った。クラウド事業の売上高が、全売上高の1割程度だということを考えると、この事業の利益がいかに高いものかが分かる(図2)。しかもクラウド事業は拡大し続けている。その今年1~3月期における売上高は、36億6100ドルで、前年同期比43%増。今回の4~6月期決算では41億ドルとなり、同42%増加した。

AWS事業とAmazon全体の営業利益の推移
AWS事業とAmazon全体の営業利益の推移
(インフォグラフィクス出所:ドイツStatista
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 つまり、Amazonの2017年4~6月期は、eコマース事業の赤字を、クラウド事業が補い、黒字を確保した格好だ。Amazonが開示した4~6月期営業損益の内訳は、北米事業が4億3600万ドルの黒字で、海外事業(英国、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、スペイン、日本、中国、オーストラリア、インド、メキシコ、ブラジルなど)は7億2400万ドルの赤字。同社はインドなどの新興国市場などに積極的な投資を行っており、それらにかかるコストが、赤字の要因になっているようだ。