Amazon.comはようやくインドで、自前のeコマース事業を展開できることになりそうだ。米Wall Street Journaなどの海外メディアの報道によると、Amazon.comがインドで計画している食料品のネット販売事業に関する認可が、このほど下りる見通しになった。これにより同社は今後5年間で5億ドルを投じ、インド全域にわたる食料品の物流ネットワークを構築するという。

他国とは異なるインドのeコマース事業

 実はインドにおけるAmazon.comの電子商取引事業は、同社が他国で展開しているものとは大きく異なる。同社は4年前に、同国で電子商取引サイト「Amazon.in」を開設しており、現在もここで商品を販売している。だが、インドには小規模小売業者を保護するという目的で、特別な外資規制があり、Amazon.comをはじめとする外国企業は、地場企業を介さずに商品を売ることができない。

 そこでAmazon.comは同国で、地場の出店者と消費者を仲介するマーケットプレイス事業と、商品の保管と配送などを代行する「Fulfillment by Amazon(FBA)」事業を行っている。つまり、自ら商品を仕入れて販売するのではなく、電子商取引インフラや倉庫・物流ネットワークなどのロジスティック基盤を小売業者に提供し、そのサービス料を得るというビジネスを行っている。

 そうした中、インドでは2016年、Narendra Modi首相の経済・市場改革に向けた取り組みの一環として、外国直接投資の要件が緩和された。これにより、取り扱い商品が同国内で生産、加工されたものという条件で、外国企業が食料品を消費者に直接販売することが可能になった。

 これを受け、Amazon.comはインド当局に事業認可の申請を行っていたが、このほど認可が下りることになったというわけだ。前述したとおり、この規制緩和で認められる商品は、食料品に限られる。しかしこれは、Amazon.comにとって同国で初めて他国と同様の本格的な電子商取引事業が可能になることを意味する。

 Amazon.comのインド事業については2016年、同社が30億ドルの投資を行い、クラウドサービスのデータセンターやソフトウエアのエンジニアリング・開発センターを開設する計画だと伝えられた。また3年前に同社は、同国の電子商取引事業拡大を目的とした20億ドルの投資を発表。物流拠点を開設し、収納・保管能力を倍増させるとしていた。

 こうした施策が奏功しようで、同社のブランド認知度は高まっている。英国の市場調査会社Trinity McQueenによると、インドにおける電子商取引プラットフォーム別購買比率は、印Flipkart Internetが87%で首位。これにAmazon.comが79%で次ぎ、印Snapdeal.comが65%で3位となっている。米eMarketerによると、2016年のインドにおける電子商取引(小売り)の売上高は約160億ドルで、前年から55.5%増加した。これが2017年は同46.2%増の約234億ドルへと拡大すると予測されている。