米Appleと言えば、秘密主義を徹底的に貫くことで有名な企業だ。新製品や新サービスに関する情報は、発表イベント当日までは一切明かさず、競合企業などがその動きを把握できないようにしている。

 だが、そうした秘密主義であっても、主力製品である「iPhone」は年間2億台超を製造、販売している。同社は膨大な量の組み立て業務をアジアの製造受託業者に依頼しなければならず、それらの情報筋から次期製品に関する情報がたびたび漏れ伝えられる。

 ところが、このほどは、Appleの労働災害に関する内部文書が、数百人に上る同社社員に誤送信された。これを米メディアが入手して報じたことで、同社の新たな分野への技術開発状況を垣間見ることができた、と話題になった。

AR用の眼鏡型機器を開発か

 その内部文書には、2017年2月から3月にかけてAppleで起きた70件超に上る事故・事象が記されている。中には、社内のカフェテリアで働く従業員がやけどを負ったなど、同社製品とは無縁と思われるものも数多くある。

 ただ、そのうちの2件については、かねて観測が出ていた、AR(拡張現実)関連の製品開発を示すものと言われている。1つは、ある試作機を試験していたAppleの女性社員が、試験中にレーザー閃光を見るようになったという事象。この社員は目に不快感を覚え、上司である研究チームのリーダーにそのことを告げた。上司は眼科医の診察を受けるよう指示し、試作機の分析を行うことにした。

 もう1つは、新しい試作機を試験していた男性社員が、目に痛みを訴えたというもの。試作機のケースには安全上の目的で封止処理が施されていたものの、その部分が破損していた。この社員は、目の痛みと試作機にはなんらかの関連がある、と考えたという。

 内部文書には、これらの試作機が実際にどういうものであるかは記されていない。だが情報筋は、Appleがひそかに開発しているAR用の眼鏡型機器と関連があると推測している。

 AppleがAR用眼鏡型機器を開発しているという観測はかねてから伝えられていた。例えば、元Microsoftテクノロジーエバンジェリストで、著名ブロガーのRobert Scoble氏は、Appleがそうした製品の開発で、ドイツの光学機器大手Carl Zeissと連携していると述べている。

 また米Bloombergは2016年11月、Appleが製品化を検討している眼鏡型機器は無線でiPhoneと接続し、画像などのデジタル情報を利用者の視界に表示すると伝えていた。Bloombergによると、Appleはすでにこの開発プロジェクトに関して複数の製造受託業者と協議しており、そのうちの1社には試験目的でディスプレー部品を発注した。