複数の海外メディアが伝えるところによると、米Appleはドイツの光学機器大手Carl Zeissと連携し、眼鏡型の端末を開発しているもようだ。その端末とは、目の前の現実の場面にデジタル情報を重ね合わせて表示する「AR:augmented reality(拡張現実)」や、現実の場面とデジタルをさらに融合させる「MR:mixed reality(複合現実)」を実現するもので、早ければ2017年中に製品が発表される見通しという。

 この情報の発信源は、元Microsoftテクノロジーエバンジェリストで、著名ブロガーのRobert Scoble氏。同氏がCarl Zeissの従業員にAppleのプロジェクトについての確認をとり、自身のFacebookページで報告したことが話題となり、海外メディアが一斉に報じた。

Appleの社内に数百人規模の研究開発部門

 Appleがこうした眼鏡型ウエアラブル端末の研究開発を行っているという観測が出たのはこれが初めてではない。2016年11月に米Bloombergは、Appleが製品化を検討している端末は無線でiPhoneと接続し、画像などのデジタル情報を利用者の視界に表示すると伝えていた。Bloombergによると、Appleはすでにこの眼鏡型端末のプロジェクトに関して複数のサプライヤーと協議しており、そのうちの1社には試験目的でディスプレー部品を発注したという。

 この分野では、実際の場面から離れ完全にデジタル世界の中に身を置く「VR:virtual reality(仮想現実)」技術も注目されているが、Appleはこうした分野の技術に巨額の投資を行っていると見られている。

 例えば2016年は、VRの研究分野で第一人者と言われるDoug Bowman氏をAppleが雇い入れたと報じられた。Bowman氏は、バージニア工科大学のコンピュータ科学の教授で、同大学のヒューマンコンピュータインタラクション・センターのディレクターを務めていた人物。3次元(3D)ユーザーインタフェースの設計と、VRの有益性に関する研究が専門で、その研究範囲はARにも及ぶ。

 そして、Appleにはこれらの技術を研究する数百人規模の部門があり、同社がこれまで買収してきた数々の企業の人材が在籍していると海外のメディアは伝えている。それらの報道によると、Appleでは2000年代半ばに故Steve Jobs指揮の下でVR用ヘッドセットの開発が行われていたが、技術が未完成のまま計画は中断された。ところが、米Facebookが約20億ドルでVRヘッドセットを開発するOculus VRを買収した2014年ごろから、Appleのこの分野における興味が再燃した。

 同社はすでに3Dモーショントラッキング技術を手がけるイスラエルのPrimeSenseを買収していたが、FacebookによるOculus VR買収の翌年(2015年)5月にはAR用アプリケーションの開発ソフトウエアや、現実のテーブルの表面などを大型タッチスクリーンとして利用するためのウエアラブル技術を手がけるドイツMetaioを買収している。

 同年11月には、モーションキャプチャーを使い、人間の表情をリアルタイムでアバターなどのデジタルフィギュアに反映させる技術を手がけるスイスのFaceshiftを買収した。さらに2016年には、顔の表情から感情を読み取るAI(人工知能)技術を手がける米Emotientも買収したとも伝えられた。

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