先ごろ米Googleは、中国・北京に人工知能(AI)の研究拠点を開設すると発表した。その施設とは、「Google AI China Center(谷歌AI中国中心)」と呼ばれる研究所。ここで同社は、AIに関する基礎研究を手掛けるという。

 この事業では、Googleクラウドサービス部門の幹部で、米スタンフォード大学コンピューターサイエンス学部の准教授でもあるFei-Fei Li(フェイフェイ・リー)氏が、研究所の共同所長を務める。同社はすでに、深層学習や自然言語処理といった分野で中国人研究者を雇い入れているが、今後さらに人員を増やし、コンピュータビジョンの分野でも研究者を集めると、Li氏は話している。

中国市場への再参入を計画か

 こうしたGoogleの中国における新たな動きについては、同社が中国市場への再参入を狙っていることを意味すると指摘するアナリストもいる。Googleはかつて、中国で検索サービスを提供していた。だが、同国からの電子メールサービスに対するサイバー攻撃や、当局に強いられていた検閲が受け入れられないとして、2010年に同国本土で提供していた検索サービスを停止した。

 代替策として同社は、サービスを提供するためのサーバーを本土とは法制度が異なる特別行政区の香港に移し、香港経由で本土向け検索サービスを開始した。しかし、その後サービスは断続的に中国本土からアクセスできなくなり、天安門事件から25周年を迎えた2014年半ばに、完全に遮断された。中国本土では現在、メールサービスのGmail、アプリ配信のGoogle Play、動画配信のYouTubeなども利用できない状態になっている。

 こうした状況について米Wall Street Journalは、Googleのサービスと連携することを前提に開発されたスマートフォンやAIスピーカーの中国展開が困難になっていると伝えている。

激化する技術開発と人材獲得の競争

 AIなどの昨今注目されているテクノロジー分野では、中国と米国の企業間で開発競争が激化している。そうしたなか、中国政府は積極的に国内企業を後押している。例えば、香港の英字紙South China Morning Postによると、中国科学技術省は2017年11月、次世代AI発展計画と科学技術プロジェクトの始動式を開催した。このとき科学技術省は、今後推進する国家4大AIプロジェクトの担い手として、同国のIT大手4社を選んだ。その4社とは、「BAT」と呼ばれるBaidu(百度)、Alibaba(阿里巴巴)、Tencent(騰訊)の3社と、音声認識技術のiFlyTek(科大訊飛)だ。

 Wall Street Journalによると、これら中国4社はいずれも米国の研究所を開設しているか、今後開設する計画を立てている。優秀な人材の獲得といった分野でも、米中企業間の競争が激化しているという。