多くの小売りチェーンは、期限付きのポイントプログラムを実施しています。ここで、そんなプログラムを行うホームセンターチェーンの店舗があったとします。そしてそこで5000円で販売しているある商品の売り上げが落ちている状況を考えましょう。

 ここで問題です。以下の2つの場合、どちらの対策の方がより売り上げ回復に効果的でしょうか?

対策A:300円下げて4700円にする

対策B:値段は5000円のままにする。ただしこの商品を購入した顧客に300ポイント(300円相当)を提供する

 合理的な消費者だったら、そのチェーン店でしか使えず、時間がたてば失効するポイントより、同額の現金値引き300円分を手にするAを選ぶでしょう。

非合理な値ごろ感を説明するプロスペクト理論

 ところがこれまでの研究や実際のデータ解析からは、非合理な消費者の選択と思えるBの方が、売り上げを伸ばすケースが多いと分かっています。

 その理由は、2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンらが提案したプロスペクト理論という考え方で説明できます()。

図●消費者が金額に対して感じる好ましさは比例関係にはならない
図●消費者が金額に対して感じる好ましさは比例関係にはならない