ITベンダーの技術者や営業担当者、ユーザー企業のシステム部員といったIT人材の育成策が転換点にさしかかっている。従来型の人材育成プログラムでは対応できず、教育内容や育成方法を見直し始めた企業が相次いでいる。先行する各社共通の課題、そして2015年以降に多くのITベンダーやシステム部門が直面するであろう課題が、IT人材の“再”教育である。

 ここでいう再教育とは、「社員が備えていて当たり前と思われるスキルについて改めて教育すること」、または「過去に研修した内容について改めて教育すること」を意味する。新たな領域やより高いレベルの仕事を行うための“攻め”の教育ではなく、目の前にある仕事を円滑に進めるために必要に迫られて行う“守り”の教育といえる。

 例えば、ITベンダーの新人にパソコンの使い方や文章の書き方を教育する、マネジメントを担っていたミドル層にネットワーク技術の基本から教える、といったようなことだ。極端な例に見えるかもしれないが、実際に筆者が相談を受けた案件だ。しかも、IT業界の人なら名前を聞いたことがあるだろう中堅規模のITベンダーからの相談が続いたため、今後、IT業界全体に人材再教育の問題が広がっていくのではないかと懸念している。

 特に今後、大きな課題となりそうなのが、新入社員と40代ミドル層に対する再教育である。2015年4月からの人材育成策を検討する上で、留意しておくとよさそうな例をいくつか紹介しよう。

パソコン操作と文章の書き方から“再”教育

 IT業界は他業界に比べて、人材育成に熱心な業界と言われている。特に新入社員の教育は手厚い。短いところで2~3カ月、長いところでは1年近くを新入社員教育に当てている。その新人教育で2015年以降に課題となりそうな“再”教育のテーマが、「パソコン操作」と「日本語での文章の書き方」だ。「そんなことは高校や大学、もしくは日常生活で身に付けているのでは」という声もあるだろう。だが、実際にそこまで考慮しなければならない状況に直面している企業が出てきている。